鼻をつまむとイチゴの味がわからない?! 不思議な味覚の世界
味覚と嗅覚は、区別しにくい?
鼻をつまんで目を閉じて飴をなめると甘酸っぱい味しか感じられず、それがイチゴ飴だとわかる人はいません。これは口の中に広がる香りが鼻腔を抜ける時に嗅覚がイチゴの香りと感じるからです。例えば、「風邪をひいて味がわからない」という現象も、実は味覚ではなく、鼻詰まりによる嗅覚を感じないことが原因です。一般的に味と呼ばれる風味には嗅覚が寄与する部分が大きいのです。
栄養と味覚の関係
タンパク質レベルが高い食餌を摂取したラットと低い食餌のラットで好む食塩濃度を調べる実験が行われ、その結果、タンパク質レベルが低いネズミのほうが塩分濃度の高い水を徐々に好むことがわかり、更に、遺伝的に高血圧を発症しているラットの場合、その傾向が顕著に見られました。このことから、味の嗜好性と栄養状態の関係、高血圧などの疾病との食塩の関係など多くのことが考えられます。また、味は舌の上にある「味蕾」で感じます。味蕾は10日ほどで入れ替わるのですが、このターンオーバーを放射性物質を使って計測したところ、タンパク質レベルの高いラットに比べて、低いラットのほうが遅いことが分かりました。栄養状態や遺伝的背景により、味覚を介して摂取行動や嗜好性に影響するのです。
味覚の研究で寿命をのばせるか?
ヒトを対象に高齢者の苦味の感受性について行われた研究では、苦味感受性の加齢による影響が調べられました。その結果、研究当時はまだ味覚受容体が同定されていなかったものの、苦味物質ごとに衰え方が異なることがわかりました。最近の研究では、五基本味(甘味、旨味、酸味、塩味、苦味)の受容体が身体の各部位に多数あることが判明し、例えば肺や鼻には苦味受容体、腸には甘味受容体など、なぜ各受容体がそこにあるのか研究が進められています。こうした全身の味覚を数値で可視化して生理的にコントロールできるようになれば、健康をより維持できるようになるのではないかと期待されます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
新潟食料農業大学 食料産業学部 食料産業学科 フードコース 教授 横向 慶子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
味覚生理学、動物行動学、食嗜好科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?