社会心理学で防災を考える

社会心理学で防災を考える

防災は大切だと思う。でも実際には……

あなたは防災を大切なことだと思っていますか? 日本は災害が多い国で、世界の国土面積の0.25%の広さに対して大きな地震の20%が日本で発生しています。そのために防災教育も行き届いており、日本人の防災「意識」は世界的にみても高いといえます。しかし、そんな日本でも実際に非常食や飲み水を備蓄するなど「行動」している人は多くありません。防災行動をとる人を増やすためには、何をどう伝えると効果的でしょうか。

「みんなが防災行動をとっている」と言われたら?

従来、防災行動をとるのは自然災害の恐ろしさを感じるからだと考えられていました。しかし社会心理学の研究が進み、防災意識の高さやリスクへの認識は、実際の行動にあまり影響を与えていないことがわかってきました。一方で、「他のみんなは防災用品を準備している」という他者の動向を伝えると、防災行動が増えることがわかりました。他者の防災行動は、自分の命や安全とは直接関係ないはずです。それでも、他者の振る舞いは人の行動に強く影響を与えているのです。

「みんな」の長所と短所

さらに研究が進みわかったことは、「みんな」の情報は、望ましい行動につながることもある一方で、意図しない悪影響の原因にもなりうるということです。「大多数がやっている」とは、裏を返せば「やっていない人もある程度存在する」という証拠になってしまうからです。インターネット上での実験では、「みんな防災をしている」と伝えると、もともと防災しようと思っていた人の防災行動は増えた一方で、「していない人もいるから、自分もやらなくていい」と判断する人もいることがわかりました。
このように、「みんな」の影響などを用いて望ましい行動変容を促そうとする仕組みのことをナッジといいます。現在さまざまな領域で導入が進められていますが、このナッジが有効であることを示すこととともに、実際に社会に導入するにあたり、慎重な社会心理学的な検討も必要なのです。

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関西福祉科学大学 心理科学部 心理科学科 講師 尾崎 拓 先生

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大学での学びを楽しむためには、高校までの勉強が大切です。大学では答えのない問いに向き合います。答えのない問いに取り組む際には、「どのような問いも解けるはず」と高校時代に確信していることが基礎になるからです。実際には、自分なりに問いに取り組んでも答えにたどり着く保証はありませんし、一応答えを見つけてもそれはあくまで暫定的なものであることに耐えなくてはいけません。答えのない問いに向き合うというのはつらいことなのですが、「解けるはず」という確信があれば、そのつらさも楽しむことができます。

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