講義No.11127 法学

憲法の存在が、誰も排除されることのない平等な社会をつくる

憲法の存在が、誰も排除されることのない平等な社会をつくる

社会的排除と憲法

ある人が雇用や地域社会、福祉から切り離されることを「社会的排除」といいます。その原因は不景気や健康上の問題などさまざまですが、20世紀後半以降のヨーロッパではこれを個人の努力や運の問題とせず、国や地域が解決すべき問題だととらえるようになりました。日本でも2021年に内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置され、国家として解決する姿勢を見せています。こうした政策レベルの対策が進む中で、憲法学の分野でこれをさらに法的な主張にまで高め、社会的排除を受けている人が裁判所にその解決を求められないか、という視点に立った研究を行っています。

すべての国民の平等を守る

その根拠となるのは、憲法です。日本国憲法第14条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあります。しかし日本では、例えば結婚後の姓の選択や、職場における評価・昇進制度において、女性は男性より不利な状況にあります。また同性婚や婚外子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子)の相続や国籍選択といったマイノリティに対する不平等な状況、つまり社会的排除もまだ残っており、これに対して裁判が起こされ、違憲判決が出されたり、法改正が行われたこともあります。

多数派の意見を覆すことも

ジェンダーや性的マイノリティといった問題は、21世紀に入って盛んに議論されるようになり、法改正も進みつつあります。同じように10年後、20年後には新たな問題、マイノリティが生まれ、社会的排除が生じることも予想されます。法律は国会でつくられるため、時に多数派の意見が優先されることがあります。しかし、すべての人の人権や平等を守るためには、多数派の意見を覆すこともあるのが憲法の大きな特徴です。そんな憲法についてさまざまな視点から考える憲法学は、いつの時代もマイノリティの声に耳を傾け、手を差し伸べる学問でもあるのです。

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東北文化学園大学 経営法学部 経営法学科 准教授 淡路 智典 先生

東北文化学園大学 経営法学部 経営法学科 准教授 淡路 智典 先生

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憲法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

毎日さまざまなことが報じられています。ニュースは速報性が重んじられるため、個別の出来事の背景は省略されることが多々あります。もしあなたが気になったニュースがあれば、ぜひ自分なりに調べてください。
例えば「障がい者への合理的配慮」というニュースは、表面だけを見れば障がい者をことさらに特別扱いするようにもとらえられますが、その背景を知れば違う見方ができるはずです。また、このように気になることを自分で調べるという経験は、法学や憲法学だけでなく、将来幅広い分野の学びにも役立ちます。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東北文化学園大学に関心を持ったあなたは

東北文化学園大学は、仙台・国見の丘にキャンパスを持ち、医療・福祉・社会・経済・工学・情報の幅広い学びができる総合大学です。「実学教育」を教育理念に掲げ、専門職業人を育成する大学です。2021年4月から新しい学部を設置し、学際的な教育環境がさらに充実しました。また、「キャリアサポートセンター」の就職支援と相成って、例年高い就職率を誇り、卒業生は各業界で高い評価をいただいています。