憲法の存在が、誰も排除されることのない平等な社会をつくる
社会的排除と憲法
ある人が雇用や地域社会、福祉から切り離されることを「社会的排除」といいます。その原因は不景気や健康上の問題などさまざまですが、20世紀後半以降のヨーロッパではこれを個人の努力や運の問題とせず、国や地域が解決すべき問題だととらえるようになりました。日本でも2021年に内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」が設置され、国家として解決する姿勢を見せています。こうした政策レベルの対策が進む中で、憲法学の分野でこれをさらに法的な主張にまで高め、社会的排除を受けている人が裁判所にその解決を求められないか、という視点に立った研究を行っています。
すべての国民の平等を守る
その根拠となるのは、憲法です。日本国憲法第14条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とあります。しかし日本では、例えば結婚後の姓の選択や、職場における評価・昇進制度において、女性は男性より不利な状況にあります。また同性婚や婚外子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子)の相続や国籍選択といったマイノリティに対する不平等な状況、つまり社会的排除もまだ残っており、これに対して裁判が起こされ、違憲判決が出されたり、法改正が行われたこともあります。
多数派の意見を覆すことも
ジェンダーや性的マイノリティといった問題は、21世紀に入って盛んに議論されるようになり、法改正も進みつつあります。同じように10年後、20年後には新たな問題、マイノリティが生まれ、社会的排除が生じることも予想されます。法律は国会でつくられるため、時に多数派の意見が優先されることがあります。しかし、すべての人の人権や平等を守るためには、多数派の意見を覆すこともあるのが憲法の大きな特徴です。そんな憲法についてさまざまな視点から考える憲法学は、いつの時代もマイノリティの声に耳を傾け、手を差し伸べる学問でもあるのです。
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東北文化学園大学 経営法学部 経営法学科 准教授 淡路 智典 先生
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