死刑制度から見える社会のありかた

死刑制度から見える社会のありかた

国家が犯罪者を処罰する「刑罰権」

国家が持つ権力の中でも特に強いのが、犯罪者を処罰する「刑罰権」です。中でも死刑は人間の生命を奪う行為であり、人権尊重などの観点から世界各国で廃止が議論されてきました。法律上、すべての犯罪に対する刑罰に死刑がない国は、フランスなど108カ国にのぼります(2020年末時点)。フランスは1981年に死刑制度が廃止された一方で、1970年代までギロチンによる斬首刑が行われ続けた国でもあります。

刑罰は「死刑」か「無罪」のみの時代も

1789年の革命以前のフランスでは、国王から委任された判事(裁判官)が、裁判だけでなく犯罪の捜査や容疑者の逮捕も担いました。そのため裁判では、判事の思い通りの判決が下される傾向が目立ち、当時の思想家を中心に、裁判制度への異議が唱えられました。フランス革命期の1791年になると、刑法典が作られて、法典に沿った判決が下されるようになりました。ところがその判決は、一部の場合には、「死刑」または「無罪」という極端なこともありえました。情状酌量による刑罰の軽減が始まったのは、19世紀以降なのです。

死刑制度廃止は突然に?

刑法典の制定後も、フランスでは死刑制度廃止の議論が何度も行われましたが、結論が出ないまま制度は残り続けました。さらに1970年代に起きた児童誘拐殺人事件では、犯行の残虐さから、「犯人への死刑は必要」という世論が高まりました。新聞などのメディアが主導する厳罰化、いわゆる「ペナル・ポピュリズム」が起きたと分析する研究者もいます。ところが1981年、大統領選挙で死刑廃止を公約に掲げたミッテランが当選したことで、世論とは正反対の動きともとれる、死刑制度廃止が実現したのです。
死刑制度をめぐるフランスの法制史を、当時の政治や世論やカルチャーも踏まえて分析することで、法律と社会のありかたを浮かび上がらせる研究が進んでいます。これは死刑制度が残る日本においても、大いに参考になると言えるでしょう。

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神戸大学 法学部 法律学科 教授 福田 真希 先生

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法学部での学びは、法律の条文を正しく読み取るスキルの習得だけではありません。条文が生まれた歴史的背景や、当時の文化をひも解くことで学びを深めます。「なぜこの条文が生まれたのか」を分析し、法律と社会のありかたを考察するためには、高校生のうちに「古典」を読み通しておくことをおすすめします。映画やミュージカルでも親しまれるヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』は、比較的読みやすいでしょう。議員でもあったユゴーは、作品を通じて死刑制度廃止を主張したことでも知られています。

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