講義No.13933 法学

死後、自分の意思をどう実現するか 「遺言」を通して考える

死後、自分の意思をどう実現するか 「遺言」を通して考える

遺言とは

生前に築いた財産を、自分の死後、誰にどのぐらい相続させるのかという意思表示の方法を遺言といいます。たとえば自分で遺言を作成し、「遺言書」として残す場合は、本人の手書きで書く、印鑑を押す、日付を書くといった要件が法律で定められています。しかし、現実には印鑑ではなく拇印が押されていたり、日付ではなく「●月吉日」と書かれていたり、あるいは「すべての財産を自分の愛人に残す」といった公序良俗に反するような内容が書かれることもあり、これらの有効性を巡って裁判に発展することもあります。

遺言執行者の役割

遺言は、遺族との関係性やその内容によっては必ずしも実行されるとは限りません。そのため弁護士や銀行関係者など、自分に代わって死後に遺言の内容を実行してくれる人を「遺言執行者」として指定する制度があります。しかし、日本では遺言執行者の役割は必ずしもはっきりしていません。例えば「土地の承継」を実現する場合は不動産登記の変更だけでなく土地の引き渡しまでしなければならないのか、あるいは遺族の要請を受けて遺言を反故(ほご)にしてよいのか、または遺言執行者の判断で遺言の実行の態様を変更してもよいのかなど、未整備な点が多く残されています。

故人が残した意思を実現する

遺言や相続は、法学の分野では家族法に分類されます。遺言書に不備がある場合の判断や、遺言執行者の役割など、これから研究・議論されるべき余地が残されています。そのため、個々の法律が制定された経緯やその背景にある考えの分析、あるいはドイツやフランスといった海外の法律との比較など、研究にかかる期待は小さくありません。また近年は、遺言だけでなく、「信託」という方法で、本人に代わって第三者が財産承継を担うこともあり、注目が集まっています。生きている人の権利や尊厳を守ることだけでなく、亡くなった人の意思をいかに尊重するかを考えることも、法律を学び、研究することの目的の一つなのです。

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専修大学 法学部 法律学科 准教授 小川 惠 先生

専修大学 法学部 法律学科 准教授 小川 惠 先生

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民事法学、家族法、相続法

先生が目指すSDGs

メッセージ

法学部で学ぶ目的は、弁護士や裁判官といった法曹になるためだけではありません。法律は私たちの身近にある社会のルールですから、これについて知ることは人生を生き抜く上でも大いに役立ちます。またルールとの付き合い方を学ぶことで、いわゆるブラック校則などの身近なルールについても、自分なりに考え、対応できるようになるでしょう。学校や社会、地域におけるさまざまなルールがどのようにつくられたのかを知り、またどのように設定すれば誰もが幸せに生きられるのかを考える上でも、法学部での学びが大いに力になるはずです。

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専修大学は、1880年(明治13年)に経済科と法律科からなる専修学校として創立されました。「経済科」は日本初の、また「法律科」は私学で初の高等教育機関でした。2024年に創立145年を迎える、日本でも屈指の伝統を持つ大学です。社会科学、人文科学、総合科学、の3系統、8学部20学科からなる社会人文系総合大学として、「自ら問題を見つけ主体的に解決する知力」と「人間力」、「倫理観」を持った人材を育成しています。まずはオープンキャンパスの大学紹介や模擬授業に参加して、大学の雰囲気を体感してみてください。