歴史文化資源を生かした持続可能な観光地づくり
観光地としての野尻湖
長野県の野尻湖は、自然豊かな美しい風景とともに、氷河時代に生息していたナウマンゾウの化石が発見されたことから、観光地としてにぎわってきました。平成9年度には、年間140万人もの観光客が訪れていましたが、その後は減少の一途をたどっています。それにともない、観光収入も激減し、宿泊施設など多くの観光関連施設が閉鎖に追い込まれました。
交通の便は良くなったが
観光収入の減少には複合的な要因があります。一つには交通の便の進歩です。野尻湖は、かつては鉄道も道路も便が悪く、都心からのアクセスには時間がかかりました。そのため、訪れた観光客は宿泊をともなってゆっくりと滞在していたのです。しかし、新幹線が長野から金沢に向かって整備され、近くに高速道路のインターチェンジができると、都心からのアクセスがよくなる一方で、日帰りで帰ってしまう割合が増加します。当然、滞在時間も少なくなり、それにともない観光による消費額も減少しました。
文化財を活用する
野尻湖周辺だけでなく、観光地の衰退は全国で見られる現象です。これらの観光地を立て直す一つの方策として、歴史文化資源を生かした観光地づくりが考えられます。日本にはどの地域にもある程度の文化的な資源が存在しています。まずは、文化財としての価値を研究し、それらをどう活用して観光を組み立てていくかを考える必要があります。
そこで気をつけなければならないのは、多くの観光客が押し寄せることで、文化財としての価値を損なってしまう危険性です。文化財の価値を維持し、持続できる観光を確立するには、ガイドの活用も方策の一つです。文化財への理解を深め、一帯を巡回することで、滞在時間を伸ばして宿泊に導き、地域を活性化させる可能性も秘めています。歴史文化資源を正しく活用することが、持続可能な観光地づくりのためには重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 経済学部 観光経営学科 教授 小笠原 永隆 先生
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