起業家教育から学ぶものは

起業家精神を育成したい
自ら事業を立ち上げる「起業家」には、ゼロから新しい製品やサービスを生み出し、社会課題を発見して解決するだけでなく、経済成長をけん引する役割も期待されています。日本でも、政府が育成計画を発表するなど、起業家の育成が社会的に重視されています。
こうした動きに伴い、起業家精神(アントレプレナーシップ)や、起業に必要な知識・スキルを養う「起業家教育」も活発に行われています。
実践に効果あり
起業家育成の重要性が高まるにつれて、その効果的な教育方法に関する研究も進んでいます。2017年以降に発表された起業家教育に関する論文を分析した研究では、単に知識を伝える「講義型」よりも、学習者が実際の課題に取り組み、製品やサービスを作る「体験型」や、講義型と体験型を組み合わせた「ハイブリッド型」の方が、よい高い効果が認められました。さらに教師の質や、学習者が「この教育は自分のためのものだ」と感じる心理的所有感などが、実際の起業への動機づけに影響を与えることも示されています。
起業につながらなくても
一方で、起業家教育を受けても、必ずしも起業意欲が高まるわけではないという研究結果もあります。国内外の研究では、「起業家教育を受けた人は、程度の差はあれ、起業に対してポジティブなイメージを持つ」と広く認識されています。しかし、日本の大学生約2千人を対象としたアンケート調査では、起業家教育を受けることで、かえって起業意欲が下がった学習者もいました。具体的には、もともと起業に対してネガティブなイメージを持っていた学習者は、学習後に起業意欲が低下しました。これは起業家教育を通じて、起業の難しさや高い失敗率といったリスクを学んだ結果、「自分には起業よりも安定した会社への就職が向いている」と考えるようになったためだと推察されます。
それでもこの結果から、起業意欲が高まらなかったとしても、学習者の自己理解やキャリア選択に役立った点で、起業家教育には効果はあったと言えるでしょう。
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