患者ロボットと学んで、薬学的視点から治療に参加する薬剤師へ
「薬剤師は患者に触れられない」は都市伝説?
医師が処方した薬を指示通りに調剤することは、薬剤師の重要な仕事の1つです。しかし近年、服薬後の効果の確認、副作用の防止、医師への処方提案などの役割も、薬剤師に求められるようになりました。
以前は、「薬剤師が患者に触れてはならない」という考えがありましたが、もうそんな時代ではありません。薬物療法を適切に実施するために、患者さんに触れて脈拍・血圧・呼吸・体温・意識といったバイタルサインを正しく把握するスキルや全身状態を観察するフィジカルアセスメント能力が、薬剤師にも必要になってきたのです。
「患者ロボット」を活用して薬学教育を高度化する
薬学部では、バイタルサインがどういう意味を持っているのか学びますし、学生同士で脈拍の確認や聴診などの練習も行います。ただし、講義を受けているのは健康な学生が大半ですから、重大な呼吸器疾患の特徴的な呼吸音など、「異常なサイン」を体験することは困難です。病院実習でも、重症患者さんのバイタルサインを学生に取らせるようなことはできません。そこで導入されるようになったのが「患者ロボット」です。患者ロボットを使えば脈拍や血圧ばかりでなく、呼吸音、心音、腸音の聴診も可能です。さまざまな異常音、薬物投与や医療処置を行った後の心電図や血圧の変化などを体験できるロボットもあります。
ロボットを応用した「eラーニング」も可能に!
患者ロボットはコンピュータによるプログラミングが可能で、投薬前や投薬後に予想されるさまざまな病態のシナリオを作成することができます。そのため、喘息、アナフィラキシーショックや高血糖・低血糖状態など、臨床でも体験が困難な症例を、大学内にいながら体験できるのです。
さらにeラーニングへの応用も可能で、文部科学大臣賞を受賞した学習プログラムもあるほどです。ロボットを活用した薬学シミュレーション教育が広がっていけば、患者さんのための最善の薬物療法を、医師や看護師と連携しながら実践する薬剤師が増えていくことでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
九州医療科学大学 薬学部 薬学科 教授 徳永 仁 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
臨床薬学、医療薬学、薬物治療学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?