救急医療だからこそ必要な薬剤師! 効果的な薬剤投与の研究

救命救急センターに薬剤師?
救急医療の現場で薬剤師が配置されるようになったのは、ここ10年くらいです。医師と看護師は搬送されてきた患者の救命に尽力している中、薬剤師は血液などの検体を用いて、患者が普段服用している薬の分析やこれから治療に用いる薬の投与量を設計し、治療を効果的にサポートする役割を担えるようになってきました。
ただ、救急認定に合格した薬剤師はまだまだ少なく、救急医療に対応できる薬剤師の育成が求められています。
薬物動態学とは?
救急医療において最優先されるべきなのは、患者の命を救うことです。そのため、患者に使用する薬の量をじっくり考える時間は少なく、医師の経験や手順書などに応じて薬の量は設定されていました。しかし、救急の患者は、大量出血や心肺停止などさまざまであり、患者それぞれで必要な薬の量は大きく異なります。薬が体の中に入ってから、体内をどのように循環し、効果を発揮するようになるかを解析する学問に「薬物動態学」というものがありますが、救急医療の分野ではその整備が遅れていたのです。
薬剤師が救急医療の現場で活躍できるようになり、救急の患者に対する薬物動態学の研究は少しずつ進歩しています。この研究の発展は、患者個々に応じた薬物療法を提供できるようになり、命を必ず救わなければいけない救急医療の現場でこそ重要な学問になります。
より効果的な救急医療を
救命救急センターの患者は、体力の低下や大きな傷口などにより、バリア機能が低下して感染症のリスクを背負うことになります。そのため、救急医療ではほとんどの患者で菌をやっつけるための薬の抗生剤が使用されます。しかし、抗生剤は投与量を誤ると、治療が遅れたり、副作用が生じたりします。薬剤師は患者に投与された抗生剤が体の中でどのように循環しているかを解析して、安全かつ最大の効果を期待できる薬の量に調節することができます。多くの救急医療機関で薬剤師がこの力を発揮できるようになれば、薬学の力でたくさんの命を救えるようになるはずです。
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先生情報 / 大学情報

福岡大学薬学部 准教授中野 貴文 先生
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医療薬学、薬理学、薬物動態学先生が目指すSDGs
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