人間を総合的に観察しながら健康を追究する「東洋医学」
さまざまな分野で取り入れられる「東洋医学」
あなたは、東洋医学の鍼灸(しんきゅう)治療を受けたことがありますか? 近年は、先端医療を研究する大学病院などでも、東洋医学を積極的に取り入れるようになりました。またアスレティックトレーナーとしてスポーツ分野や、健康美をめざす美容分野などにも応用されています。
目に見えないのに「心」はなぜ痛む?
転んだり身体を強くぶつけたりした時に「痛い」と感じるのは、身体への刺激が神経を介して脳に伝わり、「痛み」を認識するからです。では、「心が痛む」という状態は、なぜ起きるのでしょう?
つらいことがあった時、身体には何の刺激も加わっていないのに、多くの人は胸が締め付けられるような感覚を覚えます。精神的につらい状態が続くと、脳は身体を傷つけられた時と同じような反応を示すという実験報告もあります。「身体」という物質的なものと、「精神」という目には見えないものとの関わりを考えなければ、「痛み」のメカニズムを解明することはできないのです。
「気のせい」の「気」って、どこにある?
「気のせい」という言葉があります。また、身体をぶつけたのに別のことに夢中になっていて、あまり痛みが「気にならなかった」などの経験があるでしょう。では、この「気」とは何で、どこにあるのでしょうか? 鍼灸治療も、身体に対する侵襲(しんしゅう:生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激)のはずなのに、気持ち良いと感じ、身体の不調が改善します。これも、「気のせい」なのでしょうか。
西洋医学では、痛みや身心のストレスは主に脳が認識するものと考えますが、東洋医学では五臓六腑それぞれに精神があり、それらが絡み合ってさまざまな身体現象を起こすと考えます。「健康」について考えるには、疾患部分を分析的に見る西洋医学の見地だけではなく、人の身体と精神との関わりを総合的に観察する、東洋医学の見地も必要なのです。
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先生情報 / 大学情報
九州医療科学大学 社会福祉学部 スポーツ健康福祉学科 教授 渡邊 一平 先生
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