人間と機械との間の「意思疎通」を図る「インタラクションデザイン」

人間と機械との間の「意思疎通」を図る「インタラクションデザイン」

ハサミやSDカードの優れたデザイン性

「使いやすいデザイン」とは何かを考えてみると、使い方を「制限する」デザインだと言うことができます。例えば、ハサミはその形状から、片手で持って指を入れて使うものだと直感的にわかります。長方形で一つの角だけ切れた形をしたSDカードも同様です。もしSDカードが正方形だったら、スロットにどういう方向で入れていいか迷ってしまいますし、角が切ってあることによって、裏表を間違えると挿入できないようになっています。このように、行為の可能性を絞り込むことで、使い方がわかりやすくなるのです。

人間の特性を理解したデザインを

道具や機械の設計において、人間の特性を理解した、操作がしやすいデザインを、「インタラクションデザイン」といいます。インタラクションデザインとなるためには設計の際、人間と、機械など人工物のさまざまな「間」を考えることが重要です。スイッチを押してから反応するまでのタイムラグなどを考える「時間的な間」、操作に介在するのはディスプレイなのか音声なのかなど、ユーザインタフェースを考える「空間的な間」、そして、人間の意図と機械の自律性の両立などを考える「心理的な間」です。これらを考慮するために、心理学や認知科学の知見が大いに生かされています。

人間と人工物のスムーズなコミュニケーション

人間は、何度も行う動作を学習して慣れていくため、いつのまにか無意識にしている行動がたくさんあります。その無意識の部分を理解せずに、効率のみを考えた設計をすると、「何だか使いにくい」機械ができてしまいます。人工知能(AI)が発達している現在、例えば、掃除ロボットは自律的に部屋の掃除をしてくれますが、人間が「ここを重点的に掃除してほしい」と考えたとき、それをきちんと反映できるように設計するのも、インタラクションデザインの研究の一つです。こうした研究は、人間とAIが直接コミュニケーションをとるスマートスピーカーの開発などにも応用されています。

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信州大学 工学部 電子情報システム工学科 教授 小林 一樹 先生

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メッセージ

自分自身の「メカニズム」というものを考えてみると面白いでしょう。例えば、暗い部屋に入ったら、電灯のスイッチを手探りしますね。なぜ、そんなことをするのでしょう。このような、習慣として無意識にしている行動というのが実は重要で、そこには人間の欲求や学習能力について理解するための鍵があります。
また、人間とは、同じ情報を見聞きしても、解釈は人によって違うものです。自分の思考パターンや無意識について考えるということは、自分の好きなことや、向いている分野を知ることにもつながります。

先生への質問

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松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。