世界初! ストレスを映し出す診断装置

世界初! ストレスを映し出す診断装置

チップを口に入れるだけ

勉強や部活、人間関係など、高校生はストレスを感じることも多いでしょう。どの程度のストレスを受けているのかを、客観的に測定することができれば、年々増加しているうつ病の早期治療や、セルフケアにつなげることができます。そこで、ストレスを客観的に診断する医療機器として世界で初めて実用化されたのが、酵素分析装置「唾液アミラーゼモニター」です。これは、ストレスによって交感神経が興奮状態になると、唾液に含まれる消化酵素の一つ、「アミラーゼ」の濃度が高くなることを利用したものです。使い捨ての検査チップを数十秒口中に含むだけで、そのときのストレスの溜まり具合を知ることができます。唾液中のアミラーゼの濃度が高ければ高いほど、検査チップが反応して黄色くなり、その濃度を光センサで計測して数値化するのです。

痛みも傷もない「非侵襲式」測定法

以前は医療現場であまり注目されることのなかった唾液ですが、実は濃度の差こそあれ、血液とほぼ同じ成分が含まれていることがわかってきました。唾液による診断は、誰にでも簡単に検査できる画期的な診断技術です。体に針などを刺さない「非侵襲(ひしんしゅう)式」で、精神的・肉体的な苦痛やウイルス感染の危険がありません。酵素分析装置は、これまで脳波や血圧、心電図などでしか測ることのできなかったストレスを計測する方法として、大いに期待されています。

より多面的に診断できる測定器の開発をめざして

現在、実用化に向けて研究が進められているのが、やはり唾液中に含まれる「コルチゾール」という成分を計測する機器です。交感神経系のストレス状態を反映するアミラーゼに対して、コルチゾールは内分泌系のストレス状態を表す指標となります。二つの方法で計測できれば、より正確にストレス状態を診断することができます。完成すれば、ストレスフルな現代社会の病気の予防に、重要な役割を果たしてくれるでしょう。

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信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科 教授 山口 昌樹 先生

信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科 教授 山口 昌樹 先生

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生体工学、ロボット工学

メッセージ

いま、日本は元気がなく、学生も保守的になっていると感じます。しかし、人の役に立つものを実用化するのが工学の役目です。新しいことにチャレンジする気持ちがないと、新しいものを生み出すことはできません。「経験がないから」とか、「これは苦手だから」と自分の可能性に線を引かず、チャレンジする気持ちを大切にしましょう。専門分野はしっかりと学ぶべきですが、「自分がやるのはこれだけ」と決めてしまわずに、広い視野を持って、いろいろな分野にトライしてください。興味を感じたほうへ、どんどん世界を広げていきましょう。

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信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
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