生活を支え、エコに貢献する「機能性セラミックス」
セラミックスは「強さ」から「機能性」へ
無機物を焼き固めた素材、セラミックスでは、従来は「いかに硬く丈夫にできるか」という研究が主体でした。近年は特定の機能を持った「機能性セラミックス」の研究が盛んです。例えば、固体電解質(外部からの電場によってイオンを移動させることができる固体)を構成するセラミックスは、EV(電気自動車)の全固体電池などに利用することができます。全固体電池はエネルギー密度が高く、液漏れの心配もないことから、その普及により二酸化炭素の排出量を大幅に減らすことができます。
測定や発光の機能があるセラミックス
機能性セラミックスは、ほかの分野でも有用です。可変抵抗素子を構成するセラミックスは、ある電圧まで絶縁体で、その電圧以上で良導体に変化する性質があり、静電気などの破壊的な電流から中心回路を保護する働きがあります。また、電気エネルギーを光に変換したり、高エネルギーの光をより低エネルギーの光に変換したりできるセラミックスもあります。LED照明の質の向上や、植物工場で使う育成ライト、そしてシリコン太陽光電池の発電効率向上のための波長変換フィルターなど、多方面への応用が期待できます。気体を吸着する機能を持つセラミックスは、複層断熱ガラスの断熱性の向上に利用でき、冷暖房のエネルギー効率を上げることができます。
機能性セラミックスで環境問題を解決
機能性セラミックスの特性は、結晶構造、すなわち原子の並び方がカギとなります。例えば炭素は、結晶構造次第で黒鉛にもダイヤモンドにもなります。セラミックスでも結晶構造に基づく新しい機能が続々と発見されています。将来的には、セラミックスで窒素を吸収し、空気から肥料を作ることも夢ではありません。このように機能性セラミックスの材料研究は、エコロジーやサステイナブルな社会の実現に大きく貢献します。機能性セラミックスの研究が進めば特定の金属への依存度を下げることができるようになるなど、資源の少ない日本にとって特に重要な技術と言えます。
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山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 教授 松嶋 雄太 先生
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