大容量で、繰り返し使えて環境にも優しい、新しい電池

大容量で、繰り返し使えて環境にも優しい、新しい電池

経済・環境・地球により優しい二次電池

充電を行うことで繰り返し利用できる二次電池は、ノートパソコンなどにも搭載されているほか、企業で使われるような規模の大きなものや、一般的な電池としても多用されています。二次電池はリチウムイオン電池が主流となっていますが、もっと新しい、環境、コスト、資源の問題をクリアできる電池の開発が進行中です。そこで注目されているのが「ナトリウムイオン」です。海水に多く含まれていることから、リチウムイオンと比べて、資源として世界中に存在している、価格の上下が少ない、環境にも優しい、というメリットを備えています。このナトリウムイオンを使って、リチウムイオンよりも高性能な二次電池を生み出すことが研究目標とされているのです。

先発品をしのぐ、よりよい電池を

新しいナトリウムイオン電池が完成すれば、今よりも安価で、今まで以上に再充電可能な電池が登場します。いくつかの国ではすでに販売されていますが、日本ではそれらを参考にしつつ、より高性能な電池を作ることをめざして研究を進めています。
この研究で現在課題となっているのは、「正極」という電流が流れ込む極の材料を作ることです。この点で成果が上がれば、再生可能なエネルギーをたくさんためて、安い値段で提供できるようになります。もちろん、使われる場所によっては小型化も可能です。

「サイクル特性」がカギ

さらに、充電・放電を繰り返していくサイクルで、どれだけ電池の容量が長持ちするかも重要なポイントになるでしょう。この充放電はサイクル特性と呼ばれますが、すでにかなりの精度が上がっており、企業などからも注目を浴びつつあります。
ナトリウムイオン電池は、近い将来日本市場にも出回ることが予測されています。地球環境に配慮しながら比較的安価な電池が使えるようになることは、消費者である私たちにとっても、企業にとっても大きなメリットをもたらすと言えるのです。

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先生情報 / 大学情報

関西学院大学 工学部 物質工学課程 教授 吉川 浩史 先生

関西学院大学 工学部 物質工学課程 教授 吉川 浩史 先生

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電気化学、無機化学、 物理化学

メッセージ

どのような物質や材料が世の中で役立つものになるかは、試してみなければわかりません。それを探り当てようとする化学者は、錬金術師であり、宝探しをする探検家でもあると言えるでしょう。探検家などの気持ちに共感しつつ研究を進められるのは、実に大きな楽しみです。その楽しさを実感するには、まず「世の中にある何を探っていくのか」を決めなければなりません。だからこそ、高校生のうちに音楽、映画、書籍、動画など何でもいいので、多くのものに触れて、体験を重ねていくことが重要だと思います。

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スクールモットーである"Mastery for Service"は、「奉仕のための練達」と訳され、関西学院の人間として目指すべき姿を示しています。1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって創立された関西学院は、このスクールモットーを体現する、世界市民を育むことを使命とし、現在、関西学院の3つのキャンパスでは、約2万人の学生が個性あふれる14学部で学んでいます。2021年4月からKSC(神戸三田キャンパス)は文系の総合政策学部と理系の理、工、生命環境、建築学部の5学部体制となりました。