再生医療に応用できる骨髄培養と抗菌材料
培養した骨髄を移植する
ケガや病気で骨を失ったり、骨が足りなかったりする人に行われる骨移植は、現在のところ肋骨などからブロックで骨を取り出して移植する方法と、腸骨内にある海面骨から細片を取り出して移植する方法があります。これは、全身麻酔をするので患者さんに負担がかかるなどの問題があります。そこでより負担の少ない効果的な移植方法として研究されているのが、取り出した骨髄細胞を培養して移植する方法です。
増殖速度の速い若者の骨髄
骨を移植すると、増殖すると同時に吸収もされてしまうので、吸収されるより速く増殖させる必要があります。実験で、12歳の女の子と50歳代の男性の骨髄を培養してみたところ、12歳の子のものは増殖するのに3日だったのに対し、50歳代の人の骨髄は10日かかりました。そこで、増殖速度の速い若い人の骨髄を培養し、それを骨の移植が必要な年配の人に移植することで、より早く骨を再生させられるのではないか、という研究がされています。
皮膚や粘膜の再生に効果的な抗菌材料
一方、骨移植の技術を応用して、セラミックスを使った皮膚や粘膜の再生も研究されています。現在、やけどなどで皮膚を移植する場合、本人の皮膚を移植するか、生体材料でできた人工皮膚を使いますが、どうしても元通りの皮膚の色になるわけではありません。やけどや創傷の治療で皮膚を再生させる場合、湿潤(濡れた)状態を保ったままにすることが大切となります。しかし、水を含んでいると菌も繁殖しやすくなり、膿んでしまいます。そこで、抗菌作用のあるセラミックス系素材を皮膚の細胞と混ぜて、患部に塗ると、皮膚の色も変わることなくきれいに治療できることがわかりました。今のところ、まだ動物実験の段階で実用化までの道のりは遠いのですが、皮膚や粘膜の移植分野では注目すべき研究の一つです。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 教授 山本 修 先生
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