ブラック校則はドイツにはない? ~民主主義との微妙な関係~
ブラック校則と民主主義
学校の「ブラック校則」が問題視されています。しばしば生徒の反発を買うのは、校則の内容だけでなく、学校が一方的に定めるという非民主主義的な構造にも起因しています。ドイツの学校にも校則はありますが、学校が独断で決めることはできません。なぜならドイツでは、学校の重要事項はすべて教師、生徒、保護者の3者で協議しなければならないと法律で定められているからです。
ナチズムが映し出した国家と学校の関係
こうした法律ができた背景には、第二次世界大戦期のドイツ国家のあり方が関係しています。ヒトラー率いるナチスは、ユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)など恐るべき狂気の政策をとりました。これを担ったのは、決して極悪人ではなく有能な官僚や一般国民だったのです。ナチズム下の学校では、国家の命令に従う教育が徹底され、国家権力の過ちに異を唱えない国民性が蔓延しました。この反省から戦後、「管理された学校」批判という形で教育改革がなされました。「人間がルールを守る」教育ではなく、「ルールが人間を守る」という民主主義と法治主義の学校をつくることへ舵を切ったのです。教師、生徒、保護者が協議すれば「ブラック校則」が放置されることはありません。
「管理された《楽しい》学校」から「自律的な学校」へ
ドイツの学校は部活動を行わず授業に特化されています。日本の学校は対照的に、授業、部活動、行事とバラエティに富んでいます。そのため学校生活を《楽しい》と感じる生徒が多いのも、実は日本の特徴です。しかし、そこには教師の献身的な働きがあり、ブラックな労働環境にも異を唱えない国民性があります。ブラック校則は、ブラック労働とも無縁ではないのです。「管理された《楽しい》学校」ではなく、教師も生徒も自由に考えを深める「自律的な学校」へと転換することが重要です。そのためには、学校だけではなく国や地方自治体も責任を負わなければなりません。学校の【外】の教育を充実させることも必要です。これらを探究する学問が「教育経営学」です。
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大阪公立大学 文学部 人間行動学科 准教授 辻野 けんま 先生
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