障がいのある子どもと「共に育つ」保育を
保育の基本は観察
子どもの発達障がいや知的障がいを見極めるのは難しく、保護者でさえ気づかないことがあります。ポイントは確実に成長のステップを踏めているかどうかです。文字を読めるのに会話はできない、自分からはよく話すけれど人の話は聞かないなど、何かしら兆候があります。接する上では、例えば、かたづけをしないことを頭ごなしに叱るのではなく、理由を察して諭します。日頃から子どもをよく観察し、点ではなく線でとらえることが大事です。これは、もちろん障がいのない子どもにも通じることです。
「上から目線」は子どもに伝わる
保育所や幼稚園、学校が注意しなければならないのは、障がいのある子どもを「入れてあげる」という考えを持たないことです。保育士や幼稚園教諭、教師からの「上から目線」は周囲に伝わり、子どもたちは障がいのある子どもを迷惑だと感じるようになります。それは「障がい者は税金の無駄使い」という間違った思想を育てかねません。
また協調が苦手な子どもに無理やり一致団結を強いるとストレスがかかり、引きこもりや不登校の原因になります。団体行動のすべては無理でも、一部だけ一緒にやろうなどと提案し、「共に育つ」という観点から全体を緩くまとめることが求められます。
病院内保育の留意点
病院での保育では、「重症心身障がい」と呼ばれる、四肢をほとんど動かせない子どももいます。彼らは言葉を発することができませんし、絵本の読み聞かせをしても無反応です。しかし、例えばまばたきの速度や頻度などを観察すると、心の中を探ることができます。ほかにも先天性疾患のある子や臓器移植を待っている子もいて、医師や看護師からは遊んでいい時間についてや、ベッドから出さない、抱っこをしない、などの指示があります。抱っこをすると下ろしたときに大泣きし、薬を吐く、酸欠を起こすといった可能性があるからです。保育士はそうした点を踏まえ、与えられた条件の中でいかに子どもが楽しく過ごせるかを工夫する必要があります。
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先生情報 / 大学情報
埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉子ども学科 教授 林 恵津子 先生
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