物理は結構いい加減? でも、凄い!
物理離れを解決するには
日本では、2000年頃から学生の物理離れが進んでいます。物理離れを解決する決定的な方法はまだわかっていませんが、物理を「おもしろい」と思える子どもを増やすことこそが重要です。しかし教科書の内容を暗記するだけの授業では、物理のおもしろさを知ることは難しいでしょう。物理をおもしろいと思って教えられる人材が育たなければ、状況を好転させることはできません。大学では、まずは教員志望の学生に物理の魅力を知ってもらうことを第一に教員養成が行われています。
公式を教えない授業
物理を好きになってもらう授業方法のひとつは「公式を覚えさせないこと」です。公式があると問題を早く解けますが、単なる、魅力が乏しい作業に陥りがちです。物理の本質は「目の前で起きている自然現象をうまく表現し、説明すること」です。そのためまずは公式の代わりに絵や図で自然現象を説明し、それを数式という言語で記述することが大切です。このような内容で授業を受けた結果、「物理は公式を暗記する教科」というイメージが変わったと答える学生もいます。
人間性を伸ばす
学校教育の目的は人格の完成であり、生徒の「人間性を磨く」ことが大切です。一方で、学校現場では学力を伸ばすことに、より多くの関心が集まることも現実です。教科教育には、学力向上と共に、生徒が望ましい人間性を身につける機会の提供が求められます。
物理の授業では、「複数人で協力してレポートを作成してもいい」という方法も実践されています。学生の学習歴は多様です。中には物理を学ぶ機会に恵まれず、大学に進学した学生もいます。得意な人が不得意な人を助ける可能性を用意すると、学生は仲間で集まり自主的にレポートに取り組むようになります。その結果学生には、仲間と協力する力、人にやさしく教える力を身につける傾向が見られました。
このような取り組みを地道に続け、少しでも物理好きを増やしていくことができれば、その人材が次の世代に物理のおもしろさを伝えてくれることが期待できます。
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