超小型ロケット開発を前進させる構造設計・構造力学の取り組み
超小型ロケット
近年、大学や企業が超小型人工衛星の開発を盛んに行っています。人工衛星を宇宙に打ち上げるにはロケットが必要ですが、現状では大型ロケットを打ち上げる際に余ったスペースを「間借り」するケースが一般的です。ただし、それでは大型ロケットの打ち上げスケジュールに合わせる必要があり、打ち上げ回数も制限されます。そこで、超小型衛星専用の超小型ロケットの開発が進んでいます。「超小型」だけに、既存の材料を使いながらいかにコンパクトかつ低コストでつくれるかが問われるため、構造設計や構造力学といった軽量なモノづくりをするために発展してきた学問が役立てられています。
「座屈」の理論と実際
構造の軽量化を図るには、薄く作ることが求められます。薄く作られた構造物が圧縮の力を受けた場合、ある限界を超えると大きく変形し荷重が支えられなくなります。このような現象を「座屈」といいます。ロケットは円筒状で、軽量化のため薄く作られているため、打ち上げ時の圧縮の力や空気から受ける力などにより座屈が起こりやすくなります。円筒の座屈は60年以上研究されていますが、これまでわかっている理論に対して実験値が半分程度、つまり実際につくるには解明されていないことが多いのです。同様に、ロケットの部材をボルトやナットで接合する「継手」部分の強度も、どのような設計がよいのかという理論が確立されておらず、接着強度の理論的な予測が難しいのが現状です。
統計で理論を補う
このような実際と理論の差を埋める研究が行われていますが、完全な理論ができあがるまで、超小型ロケットの開発がストップする訳ではありません。例えばロケットの材料や構造であれば、多くの材料や構造を一つひとつ試験し得られたデータをもとに理論との差を比較検討し設計手法を確立していきます。非常に地道で泥臭い取り組みですが、まだわかっていない理論を過去のデータの統計で補いながら、モノづくりを前進させることも、構造設計や材料力学研究の一つの側面であるといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 工学部 機械工学科 教授 髙野 敦 先生
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