宇宙機を推進させるイオンエンジンの「中身」が見えた!
はやぶさにも使用されたイオンエンジン
宇宙ロケットや人工衛星など、いわゆる宇宙機に積んであるロケットエンジンには、昔からロケット打ち上げなどに使用されている固体ロケットモータのほか、探査機や通信衛星などで幅広く使用されているイオンエンジンがあります。
化学燃料を燃やすことによって推進する固体ロケットモータは、大きなエネルギーを得られますが、分単位でしかもちません。一方、電気エネルギーによって推進力を得るイオンエンジンは、推力は小さいものの、1~2年は使えるので、大きな推力を必要としない宇宙空間での移動に適しています。小惑星探査機はやぶさにも使用されました。
見えなかった「中身」を見る工夫
イオンエンジンは、電気を使って原子が電子を失った状態のイオンを作り、電位差によって高速で排出することで推力を得ます。宇宙では得られる電力に限りがあり、推進剤(原子)の補給も難しいので、イオンの生成や加速の方法に工夫が必要です。イオンの生成や加速は金属の容器内で起こっているため、エンジンの改良や効率化をしようにも観測が難しいという問題がありました。これまでは、体温計のようなもので中を探って推定するか、数値解析をもとに設計するしかありませんでした。そこで、円筒形の金属容器であったものを直方体にし、うち2面をガラスにした実験用のエンジンが製作されました。中で起きていることが見えるようにしたのです。ただし、実際に使用しているエンジンと同じ条件で作動させながら観測しやすくするためには、さまざまな工夫が必要でした。
「可視化」によってわかってきたこと
エンジン内部を可視化し、イオンの流れを視覚的に観測できるようになったことで、これまでわからなかったさまざまなことがわかってきました。数値解析や設計手法の改善ができるだけでなく、課題を発見することも可能となります。これまで手探りに近い状態で開発してきたものが、開発の方向性も確認でき、より高性能なイオンエンジンへの道筋も見えるようになったのです。
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防衛大学校 システム工学群 航空宇宙工学科 教授 中山 宜典 先生
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