無重力下で液体はどう動く? ~ロケット開発に生かされる流体力学~
航空宇宙工学の中の流体力学
ロケットや宇宙船、人工衛星、航空機の開発や飛行に関する学問分野を「航空宇宙工学」と言います。そしてこれはさらに、空気抵抗や浮力などを研究する流体力学、機体の構造や設計に関する構造力学、エンジンを研究開発する推進工学、飛行システムや操縦などの開発に関わる制御工学の4つに分かれます。
その中のひとつ、流体力学の流体とは、気体や液体のことで、それがどういう動きをするかを研究する学問が流体力学です。流体力学は、飛行機の誕生とともに飛躍的に進歩しましたが、さらに現代ではロケットや宇宙船開発において、重要な役割を果たしています。
無重力の中で水はどうなる?
宇宙飛行士が無重力状態の宇宙船の中で水をこぼすと、水が球になってふわふわ浮いてくる、という映像をテレビなどで見かけます。浮くのは重力がないからで、丸くなるのは流体力学の作用である表面張力が働くからです。もしこれが宇宙船のエンジンの中だとしたらどうでしょう? 液体燃料を使う宇宙船のエンジン内も無重力なので、同じように燃料が球になって浮いてしまいます。そのままではエンジン内にうまく燃料を送ることができません。
液体には表面をなるべく小さくしようとする特性があり、これが表面張力です。コップに水を注いでいっぱいになると、あふれる直前に表面が盛り上がる現象もその一つです。表面張力によって液面は縮まろうとするため、狭いところに集まる特性があり、これを利用して、宇宙船のエンジン内の燃料の動きを制御する研究が行われています。
宇宙開発を支える流体力学
流体力学の研究はさまざまな分野で行われていますが、航空宇宙工学における無重力下での液体の表面張力の研究は、少し特殊な研究です。しかし、無重力の中で液体がどう動くかを把握し、それをコントロールできることによって、宇宙船のエンジンの技術開発が大きく進むため、宇宙船開発、宇宙開発を支えていく重要な基礎研究なのです。
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先生情報 / 大学情報
室蘭工業大学 理工学部 創造工学科 教授 今井 良二 先生
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