「柱」に注目! ~壊れにくい建物をつくるために~
壊さなければわからないこともある
普段、誰も建物が壊れることを想定して建物の中に入らないと思います。あなたが意識すらしない「安全・安心」を提供するには、建物で特に重要な部分を実験で実際に壊して確認し、壊れにくい構造をつくる必要があります。例えば接合されている部分の強度を見るために、実物の3分の2から5分の1ほどの試験体を作って壊す実験が行われています。
もっとも負荷がかかるのはどこ?
建物でもっとも負荷がかかっているのは、建物の最下層、そして地面の下で建物を支える基礎です。基礎が弱いと建物が沈みますし、地震などで建物が健全でも地中に埋められた基礎部の損傷で建物全体が傾き、結局建物が取り壊しになることがあります。建物の基礎は、その重要性のわりに、普段目に触れないことからか研究があまり進んでいない分野でもあります。地中にあるからこそ地震後の被害を確認し難く、未来発生するかもしれない地震まで大きな問題を密かに持ち越している可能性すらあります。災害時に生じうる基礎の損傷の予測方法、災害時における損傷の確認方法の確立は、とても重要な研究テーマです。
柱の負荷を下げる構造
建物の最下層は、建物でもっとも負荷が大きい部分の一つです。鋼(こう)構造における最下層柱脚(ちゅうきゃく)の接合形式の代表例を2つ挙げると、基礎部に柱を埋め込む「埋込み型柱脚」と、基礎部の上で柱を止める「露出型柱脚」があります。埋込み型は柱の下部への負荷が、露出型は柱の上部への負荷が大きくなります。負担に偏りが出ると、大きな地震が来たときに柱が壊れてしまう可能性があります。そこで、建物の重さを支えつつ柱への負担を均等にするために、中央付近で素材を切り替えた構造が開発されました。従来は柱を鋼構造、地面と接している下部をRC(鉄筋コンクリート)にしていたものを、柱の上半分を鋼構造、下半分をRCにしたのです。その結果、上部か下部に集中していた負担を柱全体にならすことができました。この構造はすでに建築現場に導入され始めています。
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大阪公立大学 工学部 建築学科 講師 古川 幸 先生
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