講義No.08295 看護学

患者さんとともに歩み、人生をサポートする「がん看護」

患者さんとともに歩み、人生をサポートする「がん看護」

看護師の使命は、総合的な「生き方支援」

看護師の仕事といえば、診療の補助を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、実際はそれだけではなく、患者さんの身の回りの世話や生活の指導・アドバイスなど、幅広いケアを行っています。患者さんが一人の生活者として幸せに過ごすにはどうすればいいのかを一緒に考え、必要なサポートをする「生き方支援」こそが、看護師の使命なのです。

不安や恐怖を和らげる「がん看護」

がんは、ほかの病気と比べて治療法が独特です。「死」が近くにあるというイメージもあり、患者さんや家族はさまざまな苦痛や苦悩を抱えてしまいます。「がん看護」とは、治療にともなって生じる肉体的・精神的な症状へのサポートを体系づけたものです。
医師からの説明を十分理解できているかを確認したり、治療に対する不安を緩和したりと、患者さん本人と対話を重ねながら一人ひとりに合わせたケアを行います。患者さんがスムーズに社会復帰を果たせるよう、社会福祉士などのスタッフと連携して退院後のフォローまで取り組むこともあります。

がん看護における課題とは

医療の進歩で治療後の生存率は上がっていますが、がんは一生つき合っていかなければならない病気です。看護師は患者さんの退院後も様子に注意し、体調の変化に対応する必要があります。しかし、外来による治療に切り替わった後は数カ月に一度しか病院に訪れることがないケースも多く、サポートがおろそかになりがちです。
そこで必要なのは、気軽に自分の体のことを話せる場です。専門知識を持った医師や看護師からアドバイスなどが受けられるコミュニティがあれば、病気に対する苦痛や不安を少しでも和らげることができるはずです。患者さん同士も交流することで、「自分は一人ではない」という前向きな意識が生まれます。このようなフォローの機会をつくり出し、充実した生活を送れるよう継続的に支援することも、がん看護の重要な一面なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 看護学部 看護学科 准教授 林田 裕美 先生

大阪公立大学 看護学部 看護学科 准教授 林田 裕美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

看護学、がん看護学

メッセージ

「がん」は、日本人の2人に1人が発症すると言われている病気です。私は、がん患者さんとその家族に対して身体的・精神的なサポートを施す「がん看護学」について研究しています。
治療後も転移や再発の不安と闘う患者さんにとって、看護師ができるのは限られたことかもしれません。しかし、患者さんと家族が少しでも充実した生活を送れるよう、一人ひとりに適した支援を継続して行うことが、看護師の役割であり、究極の仕事だと思います。がん看護だけにとどまらず、看護全般に興味がある人は、ぜひ一緒に研究活動に取り組みましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。