乗り物から医療まで、社会を豊かにする「超伝導」の不思議な力
リニアモーターカーを動かす超伝導
物質の温度を下げていくと、ある時点で電気抵抗がゼロになります。このような現象を超伝導といいます。超伝導状態にある物質(超伝導体)には、通常よりはるかに多くの電流を流すことができます。また、超伝導体をコイル状に巻いて電流を流すと、超伝導マグネットという強力な電磁石ができ、時速500km以上のリニアモーターカーを動かす動力にも使われています。ほかにも、病院で体の中を撮影して診断するために使われているMRIも、超伝導マグネットの強力な磁気が使われています。
いかに温度を高めるか
超伝導状態にするには、極低温を作り出す必要があり、それにはコストがかかるため、応用研究の分野ではいかに高い温度で超伝導状態を発生させるかが大きなテーマです。1911年、世界で初めて超伝導を発見したオンネスの時代は、水銀を使って4.2ケルビンという絶対温度で超伝導状態になりました。1950年代に20ケルビンに、1980年代には90ケルビンにまで一気に高まり、現在では120ケルビンにまで上昇しています。病院のMRIは、現在液体ヘリウムなどで冷やす必要がありますが、このまま進めば室温で超伝導状態を作り出せるかもしれません。
超伝導の仕組みが解明されたのは1957年のことです。物質の原子の周りには、電子が独立して動いていますが、低温状態では2つの電子がペアを組むようになり、これが超伝導状態を発生させているのです。これを、発見した3人の研究者の名前の頭文字を冠してBCS理論といいます。
鉄化合物も超伝導状態に
超伝導は多くの可能性と謎を秘めています。超伝導体になる物質は、銅の酸化物がメインとされてきましたが、近年では鉄の化合物でも超伝導が発生することが発見されました。鉄とセレンの化合物をはじめ200種類以上あり、超伝導の可能性を一気に広げる発見となりましたが、鉄系超伝導がなぜ起こるのかはまだ解明されておらず、世界中の研究者が知恵を絞って挑んでいます。
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島根大学 総合理工学部 物理工学科 教授 三好 清貴 先生
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