「美」はどこに存在するか? 美・芸術の本質を読み解く美学の世界

「美」はどこに存在するか? 美・芸術の本質を読み解く美学の世界

美はこの世を超越したところにある――プラトン

「美がどこに存在するのか?」ということを、人々はどのように考えてきたのでしょうか。古代から近代までの哲学において美や芸術がどうとらえられてきたか、美学の世界から紹介します。
古代ギリシアの哲学者プラトンは、現実世界にある個物にはその原型にあたるイデアが存在する世界があり、現象とイデアの世界は別々に分割されているという二世界論を説きました。その前提に立って、例えばイスという個物を例にみると、絶対的に美しいのはイデアとしてのイスであり、現実のイスはイデアの持つ美しさを縮減した形でしかない、さらに現実のイスをモデルに描いた芸術作品としてのイスはもっとレベルの低い価値しかないということになります。

現実の事物に美は内在する――アリストテレス

プラトンの弟子、アリストテレスは異なる立場をとります。彼は、物の原型でありながら現象の世界を超越したところに存在するイデアに対して、ある物をその物たらしめる本質をエイドスと呼びました。エイドスはそれぞれの個物(例えばイス)に内在するのだとし、つまり二世界論の前提をとらず、世界はひとつとしたのです。その中で画家などの芸術家は、一般には見えないその物の本来の姿(エイドス)を明らかにすることができる、特殊な技能を持っている者と位置づけられました。

人間の認識能力の働きに美の根拠がある――カント

さらに時代が下り、18世紀のドイツの哲学者であるカントの出現は、その後の「美」のとらえ方に大きな影響を与えました。カントは、美は我々の認識対象としての事物の中にあるのではなく、ある事物を美しいと判断する人間の「認識能力の働き」の中に美の根拠があると考えたのです。
思想の歴史をひもといて、「美の所在」についての3つの違った考え方を紹介しました。あなたならどう考えますか? 美学を学ぶことで、美や芸術をめぐる哲学者たちとの対話に参加することができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 文学部 哲学歴史学科 教授 高梨 友宏 先生

大阪公立大学 文学部 哲学歴史学科 教授 高梨 友宏 先生

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美学、芸術学、哲学

メッセージ

高校までは学んだことを正確に覚えることに一生懸命だと思います。しかし、大学では「通説」と言われているものに対して疑いの目を向け、「本当はどうなのだろうか」、ということを探究する姿勢が必要です。受け身の態度ではなく、背景にあるものをどんどん探っていく、それが知的探究なのです。
哲学者であるプラトンやアリストテレス、カントも皆、知的探究をしてきたのです。あなたも、哲学や美学を通した知の探究の世界で、一緒に学んでみませんか。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。