地球大気の 「ながれ」 を微量成分で探る。
地球の大循環から都市の循環まで可視化
空気は無色・透明で直接空気のながれを見ることはできませんが、空気中に微量に含まれているさまざまな成分を測定すると、可視化することができます。あなたは吸っている空気がどこから来たのか気になったことはありませんか? 微量成分観測から、空気の「ながれ」をとらえ、地球規模の大気大循環、気象現象、地球の気候、大気環境などについてさまざまな知見を得ることができます。
大気汚染物質でわかる大気のながれ
人間の活動により、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)やエアロゾルと呼ばれる微細な粒子が放出されています。これらの物質が大気中にどのように分布しているかを測定・分析することで、多くのことが明らかになります。NOxの鉛直分布を太陽散乱光を利用して観測すると、都市中心部から汚染物質が流れる様子が可視化されます。また、ドップラーライダーという装置でPM2.5などの微粒子にレーザーを当てることで、大気のながれを直接可視化できます。PM2.5やNOxはしばしば悪者とされますが、その動きを追跡することでさまざまな現象を解明する手がかりとなります。
未知の現象を分析する手がかりをつかむために
水蒸気は地表付近では3~4%含まれていますが、熱帯の上空ではわずか100万分の3程度です。この水蒸気を追跡することで地球規模の循環が理解できます。熱帯が地球大気循環の出発点であるにもかかわらず、上空の大気循環はまだ解明されていません。そのため、人工衛星や気球を用いて水蒸気の動態が研究されています。
また、ヨウ素の地球規模の循環も注目されています。消毒薬やヨウ素でんぷん反応で知られているヨウ素ですが、フロンガスと同様にオゾン破壊の原因物質です。ヨウ素は海水に微量含まれていますが、どの海域からどれだけ、どのように大気に供給されるかは不明です。特に熱帯の海面水温が高い場所から供給されるという仮説が立てられ、観測研究が進められています。
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