生活習慣病予防への新たなアプローチ カギは「ナトカリ比」
食は健康の柱のひとつ
QOL(Quality Of Life:生活の質)は、人間が生きるうえでの満足度を表す指標で、QOLを高めるには、身体的、精神的に健康でなければなりません。健康は、栄養、運動、休養がその三本柱であり、食べることは生きることであり、人間が生活するうえでの基盤になるだけでなく、食育の観点からも大切です。そのために栄養学の分野では健康、そしてQOLの向上に寄与するさまざまな研究が進められています。
和食文化における減塩の限界
WHO(世界保健機関)は、世界中の人の食塩摂取目標を1日5グラムとしています。塩分の摂り過ぎで血圧が高い状態が続くと、血管や心臓に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞、心不全、動脈瘤(りゅう)など、多くの循環器病、生活習慣病につながったり、腎機能を低下させることも実証されています。昨今の日本では、食文化・食生活が大きく変わってきています。こうしたリスクを回避するのに減塩だけでは限界があるという知見のもと、摂取するナトリウムとカリウムの比率「ナトカリ比」を指標として、解決策を見出す研究が行われています。
疾病を予防するための新たなアプローチ
この研究は、体内のナトリウム量に対しカリウム量の比率を高めることで、減塩と同じような効果をもたらし、腎機能低下や高血圧の防止につなげられるのではないか、という視点から始まりました。この研究がさらに進めば、生活習慣病の予防にあたって減塩とは違ったアプローチが可能となります。
特に若い世代は、手軽で、満腹感があって、安価な食べ物を選んでしまいがちですが、そういった食べ物は脂質と塩分(ナトリウム)を多く含み、健康という観点からみるとマイナス面も多いです。一方、カリウムは野菜や果物に多く含まれる栄養素ですが、どうしても単価が高く、食べるのに調理などの手間がかかってしまうという側面があり、不足しがちです。今後はどうやってカリウムを摂取しやすくするか、データを社会に還元して必要性をアピールしていくか、という点が課題となっています。
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愛知学院大学 心身科学部 健康栄養学科 教授 服部 浩子 先生
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