高塩分の海水で、エビはおいしく育つ?

高塩分の海水で、エビはおいしく育つ?

おいしい食材、エビ

日本人が好んで食べる食材のひとつであるエビ類は、塩分の高い海水で育てると体内の遊離アミノ酸蓄積量が増加することが知られています。タンパク質の構成成分である20種類すべてのアミノ酸が増える訳ではなく、アラニンやグルタミンといった特定のアミノ酸の蓄積量が変化することが突き止められました。とくにアラニンは甘味をもっているため、エビの美味しさに関係している可能性があります。

アラニンの働き

成育環境中の塩分変化は、エビの体に浸透圧による影響を引き起こします。半透膜を介して濃度の異なる溶液が接すると、濃度の低い溶液から高い溶液に向かって溶媒が移動しますが、その元となる圧力が浸透圧です。この浸透圧を考えると、高い塩分の海水中にいるエビは体内の水分が外に出ていまい、逆に低い塩分海水中にいるエビは体内に余計な水分が入り込んできてしまうことになります。しかし、そのようなことが起こらないように、体の中で浸透圧を調節する機構が働いています。その機構の一つとしてアラニンの蓄積量変化が挙げられます。エビ類は環境中の塩分が上昇するとアラニンなどの特定の遊離アミノ酸量を増加させることで体内の溶質量を調節し、水分の出入りをコントロールしているのです。
さらに、アラニンの代謝経路と塩分との関係について調べてみると、アラニンはピルビン酸という物質から合成され、合成には特定の酵素が関わっているのですが、その酵素の遺伝子発現量は塩分上昇に伴って増加することがわかりました。これにより、生成物であるアラニンも増えるということが予想できます。

甘みと歯ごたえ

アラニンはエビの甘みに関係するアミノ酸です。つまり、高塩分の海水で飼育すると甘いエビに育つ可能性があるのです。また、塩分により筋肉の構成成分の割合も変わってくる可能性があるため、歯ごたえも調整できるかも知れません。エビ類の塩分適応機構を詳しく調べることで、よりおいしいエビが養殖できる可能性があるのです。

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東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 助教 小山 寬喜 先生

東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 助教 小山 寬喜 先生

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海洋生命科学、食品生産科学、水産化学

メッセージ

大学に入ったら、得意分野で勝負することになるので、自分の得意な科目は特に頑張って力をつけておきましょう。そのためには、今のうちに自分の得意な分野は何なのかを知っておくことも大切です。
しかし逆のことをいうようですが、私のように苦手だと思っていた分野でも、しっかりと勉強してみるとまったく考えが変わることもあるので、高校の科目はまんべんなく勉強してください。私の場合、高校生の頃は生物が得意で物理・化学が苦手でしたが、勉強していくうちに物理や化学の面白さに気付き得意になりました。

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