「太る」「太らない」は、遺伝子のせい? 環境が決める遺伝子の働き
遺伝子の働き
遺伝情報を共有する親子の体型や性格が似ていることはしばしばあります。近年、がんや糖尿病など、さまざまな病気について、関係する遺伝子が見つかってきています。これらの中には、遺伝的な影響が強いものもありますが、多くの場合、病気になる確率が統計学的に少し高いという程度のものです。
遺伝子の謎
遺伝子は体を作っている部品の情報です。生物の形や機能がきまる過程は複雑で、多数の部品が多段階的に関与します。遺伝子の機能は環境の影響を受けます。
「太りやすい(脂肪がたまりやすい)体質」とか、「いくら食べてもやせている」というタイプの人がいます。これらは環境因子の影響がよくわかる例です。炭水化物や脂肪の代謝を調節している遺伝子の働きが関係していますが、どんな食物をとっているのか、運動はしているかなど、生活習慣による影響が大きいのです。
遺伝子と環境
ヒトには約2万5千個の遺伝子がありますが、それらのすべてが、いつも部品を作っているわけではありません。部品を作っているときが遺伝子のスイッチが「オン」の状態とすれば、そうでない「オフ」のときもあります。環境の変化が遺伝子の「オン」や「オフ」に影響する例として、栄養状態と脂肪代謝に関係する遺伝子があげられます。肥満はこの仕組みと密接に関係しています。
人類の長い歴史で、食物が十分あるという環境はまれで、安定的に食物を得るのは困難であったと考えられます。食物を摂ったときには、脂肪をためるために必要な代謝の遺伝子が「オン」となり、食物がないときには、脂肪を分解してエネルギーを取り出す仕組みをもつことがとても重要でした。しかし、現代のように食物が十分ある環境では、脂肪をためるほうに偏ってしまい、その結果、肥満になってしまうのです。最近では、食物と肥満や病気の関係を遺伝子の働きの観点から解明する研究が盛んに行われています。
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