食材に隠された生体調節機能とは
食材には、3つの機能がある
一般的に食材には3つの機能があります。1つは身体を作ったり、エネルギーに変えたりといった栄養の機能で、2つ目は美味しく感じるとか、歯ごたえがあるといった嗜好(しこう)性です。そして3つ目は、血圧を必要以上に上げない効果があるとか、脂肪の吸収を抑えるといった生体調節機能です。この機能を持つものには、お茶に含まれるカテキン、赤ワインに含まれるレスベラトロールやトマトに含まれるリコピンなど、話題になったものもあるので、あなたもいくつかは耳にしたことがあるでしょう。
毒キノコから下剤ができる?
生体調節機能を調べるには、成分の構造式を明らかにし、その上で分子がどのように関わっていくかを調べる必要があります。私たちが普段食べる野菜や果物の場合、多くの研究機関ですでに研究が行われていますが、キノコやハーブなど、人があまり食べないものには、未着手のものがまだ多く残っています。こうした食材の中には、人類が予想もしなかったようなとんでもないものが見つかるかもしれません。実際、毒キノコとして、人が見向きもしなかったものの中に、下剤として使えるかもしれない成分が発見されたケースもありました。量を調節したり、ほかの物質と組み合わせたりすることによって、薬や健康食品になるなど、実際に商品化される可能性もあるのです。
「ツブイボタケ」ブームが来るかも
近年、実際に「ツブイボタケ」というキノコから、炎症を抑える効能があることが発見されました。まだ研究段階ではありますが、従来の抗炎症の薬とは全く違う特性を持っているということがわかっており、腰痛や手足のマヒの改善に使えるのではないかと期待されています。今後、ツブイボタケが、カテキンやリコピンのときのように注目を集めるかもしれません。今後もさらに新しい成分が発見される可能性があり、実際に薬や健康食品などとして使われるようになるには、膨大な研究が必要ですが、宝探しのような面白さを秘めている研究なのです。
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東京農業大学 応用生物科学部 食品安全健康学科 教授 阿部 尚樹 先生
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