人工知能デバイスが、知られざる動物の生態を解明し、共生を築く
センサは多種多様な分野で大活躍
情報科学では、人間社会や野生環境の実世界現象を、センサと人工知能(AI)を介して分析し、効率化や理解を促すという実社会AIの研究が行われています。実世界現象として主に「どこにいるか」「何をしているか」「どんな状態か」があり、これを把握することが基本です。ゲーム機はもちろん、福祉では高齢者の見守り強化、産業では工場の生産性向上などへの活用も始まっています。
また、動物に取り付けて野生環境に入り込ませ、動物の知られざる生態に迫る「人工知能デバイス」も登場しています。この人工知能デバイスはセンサとカメラを搭載し、消費電力の小さなセンサがデータを集め、捕食など撮影したい出来事が発生したことをAIが判断して、その時だけカメラを起動することで効率的な撮影を可能にしています。
動物との共生への応用
人工知能デバイスによって、2018年には世界で初めてウミネコの捕食の瞬間が記録されました。青森県八戸市で行われた実験では、カメラ付きのデバイスをウミネコに装着し、ウミネコが飛行中に遠くにいる水中の魚や飛んでいる虫を視認し、その動きに合わせてくちばしで採餌する様子をとらえることに成功しました。今後はクジラやサメなどの巨大海洋生物の生態をとらえる実験も予定されています。
この人工知能デバイスをさまざまな動物の生態調査に用いれば、例えば野生動物がどんな時に人間と接触するかなどを把握し、動物との共生へつなげることができると期待されています。
知らない世界を垣間見る実験
このように人工知能デバイスは多種多様な分野で新発見につながるようなデータを収集できますが、得られるデータはただの数字の羅列にすぎません。これを読み取って具体化し、そのうえで人間社会や野生環境にフィードバックする力が求められます。そこをクリアすれば、人工知能デバイスは世界で山積している問題を解決する糸口となるような、大きな可能性を秘めているのです。
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大阪大学 大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻 教授 前川 卓也 先生
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