AIも万能ではない AIモデル開発に必要なこと

AIも万能ではない AIモデル開発に必要なこと

AIモデル開発の難しさ

AI(人工知能)は、膨大なデータを学習させることによって、何かを予測したり、判定したりするコンピュータ・プログラムです。特定の機能を持った「AIモデル」をつくるためのアルゴリズム(計算方法)もたくさん開発されていて、AIモデルの開発者は、そうした技術を使って与えられた個別の課題を解決するモデルをつくり出しています。ただ、現実の課題はさまざまであり、すでにあるアルゴリズムを使えばすべてうまくいくというものではないのが、AIモデル開発の難しいところです。

対象によって工夫が必要

AIの画像判断では、例えば犬と猫を区別する際、大量の犬と猫の画像を学習させると、AIは犬と猫それぞれのパターンを見つけ出して判別できるようになります。しかし、工場の生産ラインで製品検査にAIを応用する場合、良品と不良品の画像データを大量に学習させようとしても、現実には不良品の数は圧倒的に少なく、学習させるデータがないという問題があるのです。そこで、良品のデータだけを与えて「正常とは何か」を学習させて、そうでないものを区別させるものが開発されています。

使いやすさや人の気持ちへの配慮

現実の問題をAIで解決しようとするとき、それが本当に多くの人に使ってもらえるかを考えることは非常に大切です。例えば、大量の健康診断データをAIに学習させて、特定の病気にかかっている確率を推定するAIモデルの研究もあります。インターネット上で自分の数値を入力するだけで、誰でも簡単に使えることをめざしたものです。
ユニークな例では、観葉植物を使って一人暮らしの高齢者の見守りをするAIモデルの研究もあります。カメラやマイクが部屋にあることを嫌がる人も多いので、人がいると反応して変化する植物生体電位(植物が発している微量の電気)を測定し、そのデータをAIに学習させる研究もあります。このように、使いやすさ、使う人の気持ちに配慮が必要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 融合学域 先導学類 教授 南保 英孝 先生

金沢大学 融合学域 先導学類 教授 南保 英孝 先生

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知能情報学、データ工学、感性情報学

メッセージ

世の中にある課題の解決には、人工知能などのテクノロジーに関する知識だけではなく、何が課題かを見つけ出したり、本当に人の役に立つ解決法を考えたりする、文系の知識も必要です。その意味で、将来の進路として文系か理系か迷っているなら、AIエンジニアは向いていると思います。数学とある程度のプログラミングの知識を学ぶことは必要ですが、物事を順序立てて考えられる論理的思考の能力があれば、文系・理系に関わらず社会問題の解決に関心のある人が活躍できる分野だと思います。

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金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。