ロボットの振る舞いが人にどう影響を与えるのか

ロボットの振る舞いが人にどう影響を与えるのか

人型ロボットだからできること

私たちの社会には、円形のお掃除ロボットや、工場で動いているアーム型ロボットなど、さまざまな形状のロボットが存在します。それぞれが従事する作業への適性だけを考えれば、ロボットは必ずしも人型である必要はありません。
それでも人型ロボットには、人間とのコミュニケーションをより円滑にして、心を引きつける要素があると考えられています。それを確認する「囚人のジレンマ」実験が行われました。

ロボットの感情表現が人に与える影響

「囚人のジレンマゲーム」とは、2人のプレイヤーが囚人役となり、黙秘か自白かの二択をそれぞれ同時に選んでいくゲームです。ともに黙秘すれば罪は軽く、ともに自白すればやや罪が重くなり、一方が自白してもう一方が黙秘すれば、自白した方は無罪となって黙秘した方が重罪となります。
この「囚人のジレンマゲーム」を、人間と人型ロボットのペアで連続してプレイさせます。その際、プレイごとに人型ロボットにジェスチャーや言葉で感情表現させます。両者が黙秘して協力し合えれば「喜び」、両者とも自白してしまったら「悲しみ」、ロボットだけが裏切って自白したら「恥」、人間の側が裏切って自白したら「怒り」です。
このように感情表現によって「協力的」なロボット、逆に相手への裏切りが成功した時に喜ぶ「利己的」なロボット、また、まったく感情表現を行わずに淡々とプレイするロボットを用意しました。実は全てのロボットが同じ戦略でプレイしています。
すると、「協力的」な感情表現をする人型ロボットが、人間からの協力をもっとも多く引き出す傾向にあることが明らかになったのです。

人間をポジティブにしてくれるロボット

これからの人型ロボットには、人間が話しかけたり直接触れたりした時に、ロボット自身の判断で適切な反応ができるような仕組みが求められます。そうした振る舞いが自然にできるようになれば、人型ロボットはその姿ならではの親しみやすさで、人間がよりポジティブになれるような力を引き出してくれるでしょう。

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福井大学 工学部 機械システム工学科 教授 髙橋 泰岳 先生

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メッセージ

「ロボットについての研究」と聞くと、バリバリの理系で、数学ができないとダメな研究分野と思っている人は多いと思います。でも実際は、ロボットが人間に与える影響を調べる際などに心理学や行動学の知識が必要になる場合も多いので、「理系」という言葉だけではくくれない、横断的な研究分野ではないかと思います。こういった手法のロボット研究を面白いと思って興味を持ったなら、ぜひ、私たちの研究室で一緒に学んでいきましょう。

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本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で11年連続ナンバー1の実績があります。(H19-29年度)