子どもの「苦手」を改善するソーシャルスキルトレーニング
クラスで浮いてしまう子は「苦手」を抱えている?
学校にうまく適応できず、悩んでいる子どもたちはたくさんいます。例えばうまくしゃべることができない、友だちとよくトラブルを起こす、けんかしても謝れないという子どもたちはクラスで浮いてしまいますが、なんらかの「苦手」を抱えているケースがほとんどです。そこに気づき、少しでも「苦手」の克服につなげるために、学校現場では「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」が活用されています。
苦手を見つけ、助けるSST
SSTとは「社会的スキル訓練」とも訳されますが、それぞれの「苦手」に応じたスキル向上を目的としたトレーニングのことです。学級崩壊しかけたクラスにスクールカウンセラーが赴き、ゲームなどを通したグループワークの際に取り入れることがメインになります。
過去にはこんな事例があります。先生に強く反発する生徒がいるクラスで、SSTの一環としてペットボトルを取るゲームを行いました。ところがその生徒はゲームを破壊してしまいます。そこから「物理的距離感をつかむのが苦手で、それをごまかすために強がって壊している」ということにカウンセラーが気付きました。心を開いた本人と話すと、「苦手」の自覚を認め、そのことを担任と共有することで問題行動が減りました。このように、行動の背景にある一人ひとりの特徴を学校の先生や保護者が理解することで、解決へのいい循環につながるのです。
ますます高まるSSTの需要
今、家庭内の介護や家事を担うヤングケアラーや、軽度のネグレクト、トラウマなどを抱えている子どもが増えています。そういった子どもは明るいけれどキレやすい、日によって浮き沈みがあるなどの傾向があります。このような子どもたちには第三者の助けが必要です。例えば考え方を変える、思考を止めるというトレーニングで楽になるケースもあります。コロナ禍でこうしたリスクを負う子ども達はかなり増えており、SSTの需要は益々高まってきています。
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先生情報 / 大学情報
福岡女学院大学 人間関係学部 心理学科 教授 斎藤 富由起 先生
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