講義No.11284 食物・栄養学

食品加工の力で地域経済の活性化を図る

食品加工の力で地域経済の活性化を図る

人類の発展は食品加工とともに

食品加工は、人類にとって最も古い技術の1つです。硬い木の実を砕き、粉に挽(ひ)き、水で練って食べやすくすることも、立派な食品加工です。さらに、人類は乾燥、加熱、発酵、殺菌、保存など、さまざまな加工技術を開発しました。それによって、人類は多様な栄養成分を安全に体内に取り入れることに成功し、心身の飛躍的な発達を可能にしたのです。

食品加工を駆使して地方を活性化する

食品加工技術は、人類の心身の発達に寄与しただけでなく、世界中に数多くの食文化を生み出しました。日本の各地にも、それぞれの地域に特有の食文化が息づいています。今、地域の食文化を見直し、農産物などの地域資源を加工して新たな価値を生み出し、それによって地域経済を活性化して、地方創生を図る試みが活発に行われています。
例えば、鹿児島県霧島市では、生産者や研究者と共同で、県内生産量1位の「原木しいたけ」を加工し、霧島茶なども加えて、きのこ入りのグラノーラを開発しました。また、宮崎県綾町(あやちょう)には「綾ユネスコエコパーク」という優れた地域資源があります。ここに生息するニホンミツバチの蜂蜜を加工し、新たな食品開発をすることで、自然と共生しながら地域経済に貢献する研究も進んでいます。

大手メーカーではできないことを

しかし、地域資源を素材にした食品加工なら、どんなものでも地方創生につながるわけではありません。特に食品加工は、大手食品メーカーが得意としており、大量生産で低価格の食品を産み出しています。大切なのは、大手食品メーカーと同じ土俵に立たず、彼らが採算性などを理由に手を出せない領域にチャレンジすること、そして、地方の埋もれている資源を掘り起こし、食品加工技術を駆使して現代によみがえらせることです。さらに、デザインやアピール力、販売戦略を磨くことも必要でしょう。食品加工技術は、新しい地方文化の創出と地方創生につながる、可能性に満ちたジャンルなのです。

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先生情報 / 大学情報

南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科 教授 吉本 博明 先生

南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科 教授 吉本 博明 先生

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食品加工学、食品開発学

先生が目指すSDGs

メッセージ

現代は、5年後、10年後の未来が見通しにくい時代です。現在の偏差値や進学する大学のランクで、あなたの将来が予測できるわけではありません。ですから、大学選びで大事なのは、あなたにとって「意味のあること」「納得できること」を追究することだと思います。
「意味のあること」「納得できること」を考えるとき、ぜひ念頭に置いてほしい視点の1つが、「誰かの役に立つこと」です。これからの時代を生きるとき、人の役に立つことに携わっていることが、生きる強さ、人生の納得感につながるはずです。

先生への質問

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