実は縄文人はすごかった! その生活から学ぶ未来へのヒント
縄文人は何を食べていた?
貝塚で見つかる多数の動物の骨から、縄文人の食事は狩猟による獲物が中心というイメージが強いかもしれません。ところが、近年の考古学の成果によって、低湿地遺跡でトチの実やドングリの皮が山のように見つかり、石器のわずかな付着物からはデンプンも検出されています。木の実を主なエネルギー源として食べていたことがわかってきました。トチの実もドングリもアクが強くて苦いですが、水にさらしたり、焚き火の灰を使ってアク抜きをしたりしていた痕跡が見つかっています。また、石器に残る細かなキズは、木の実をつぶす石臼として使った跡とみられます。木の実を日常的に食べていた縄文人は、とても高度な食品加工技術を持っていたと考えられるのです。
物質的・精神的豊かさも食品加工のおかげ
低湿地遺跡からは、本来なら腐って残らない漆塗りの器や櫛などの装身具、植物で編んだ大小さまざまな籠も出土しています。漆は赤と黒を使い分け、きれいに彩色されています。籠は麻やイラクサなどの植物繊維をきちんと編んであり、現代にも劣らない高い技術が確立されていたことがわかります。造形美あふれる土偶や、使い勝手が悪い火焔型土器をあえて作っていたことなどから、精神的にゆとりを持って生活していたこともうかがえます。縄文時代の特徴ともいえる、こうした物質的・精神的豊かさが得られたのは、食品加工技術が確立され、計画的に食料を調達できるようになったことが大きく関係しています。
縄文人の知恵に学ぼう
縄文時代は約1万年続いたと言われています。その間には環境の激変期もあったでしょう。それを乗り越え、生活や文化を維持することができたのは、自然の営みにうまく適応した結果であることは明らかです。さらなる遺跡の発掘と遺物の科学的分析により、食品加工をはじめとする具体的な生活像を解明する必要があります。縄文社会を持続的社会の1つの教訓とし、先人の知恵を学べば、未来の人類行動に生かせるヒントが見つかるかもしれないのです。
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弘前大学 人文社会科学部 文化創生課程 教授 上條 信彦 先生
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