食品に隠された機能には、新しい価値が潜んでいる
ゆずの「種」で、スキンケア
「ゆず」の産地として有名な高知県馬路(うまじ)村では、ゆずを使った加工品が数多く販売されています。調味料やドリンク類などの食品が主ですが、ゆずの種を利用した化粧品も商品化され、人気を集めています。開発のきっかけは、ゆずの栽培が盛んな地域で愛用されていた美容液でした。食品加工では大半が廃棄処分となる種を、昔から焼酎に浸けて美容液を作り、使用してきたのです。実際に種の成分を抽出し分析すると、肌の保湿に効果がある成分が検出され、美容への効能が実証されました。長く受け継がれてきた先人の知恵に科学的な根拠という付加価値がつき売り上げも上昇し、廃棄物処理の費用削減という課題解決にもつながっています。
耕作放棄地の再生や地域活性化に貢献
紅茶の産地といえばインドやスリランカを思い浮かべますが、国内でも良質な茶葉を使用した紅茶が生産されています。岡山県の高梁(たかはし)紅茶もその1つですが、海外のメジャーどころに比べ認知度が低く、また高齢化や過疎化のため耕作放棄の茶園が増加しました。地域農業の活性化をめざして荒廃した茶畑の再生プロジェクトも実施されていますが、担い手不足を解消するには商売として成り立つことが不可欠です。そこで着目したのが「渋みの数値化」です。高梁紅茶は甘みがあって飲みやすいと評判だったことから、海外品種の渋み成分含有量を分析し、比較したのです。今では「渋みが少なく子どもも飲みやすい紅茶」として県の特産品となり、地域活性化にも貢献しています。
食品の未知なる価値を探し出せ!
野菜や果物などが持つ味や香りは、自由に移動できない植物たちの生存戦略の産物です。独特な特徴を備えた在来品種もあり、植物の防御物質を、人に対する付加価値として利用しようという取り組みが産官学連携のもとで活発化しています。野菜や果物に限らず、食品には人に有益な成分や機能がたくさん潜在すると考えられており、その研究と開発に注目が集まっています。
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先生情報 / 大学情報
ノートルダム清心女子大学 人間生活学部 食品栄養学科 准教授 吉金 優 先生
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