育種で新品種開発! 「遺伝的多様性を利用した戦略」
トウガラシについて
ナス科トウガラシ属の植物で、果実は香辛料または野菜として世界中で食用にされています。日本で多く消費されているピーマンやシシトウ、パプリカもトウガラシ属の仲間です。ピーマンとトウガラシは同じ種なので基本的には交配することができます。トウガラシ属には多くの多様性があり、果実の大きさや色、形などさまざまです。このような多様性を司る変化は形質と呼ばれます。
育種の方法
多くの果実を着ける、味を良くするなどの形質について有用性を考えて、生物の持つ遺伝子的形質を改良して新しい品種を育成することを「育種」と呼びます。育種のベースとなるのは、Aの花粉をBの柱頭につけて受粉させる交配です。そこにバイオテクノロジーを使用することもあり、培養技術を用いてトウガラシ属ではおしべの先にある花粉の入った葯(やく)を培養し、花粉から植物体を再生させています。さらに近年は、DNAマーカーと呼ばれる特徴的なDNA配列を目印とした選抜により効率的な育種が試みられています。まず、優れた特徴を示す遺伝子の近くにDNAの特徴的な配列を見つけます。交配後に苗の段階で、特徴的な配列を検出できた個体のみを選抜することが可能となります。
未来のための育種
育種は、野菜の色を鮮やかにしたい、美味しくしたいというような消費者側の目的だけでなく、病害虫抵抗性などの生産性を高めるといった生産者側の目的もあります。現在行われている研究の1つに、世界的に多くの作物に寄生して大きな被害をもたらすネコブセンチュウに対する抵抗性品種の開発があります。ネコブセンチュウに寄生されない抵抗性が見つかった系統から、抵抗性を発揮する遺伝子近くのDNA上に特徴ある配列を見つけます。抵抗性そのものの配列ではありませんが、その近くに特徴的なDNA配列を見つけることで抵抗性個体を効率的に選抜することが可能となりました。
病気に強ければ農薬の散布回数が減るなどの環境にやさしい農業も実践できます。育種は昔から行われていますが、未来のための技術でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
南九州大学 環境園芸学部 環境園芸学科 教授 杉田 亘 先生
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環境園芸学、植物育種学、植物遺伝学先生が目指すSDGs
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