食物の「におい」をコントロールできれば、「食」の多様性が広がる
「におい」が食物の味わいを変化させる
「おいしさ」と「におい」には、密接な関わりがあります。食べ慣れている料理に香りづけのスパイスを加えただけで、いつもよりおいしく感じた経験はありませんか。また、周囲に「青臭いにおいが苦手」などの理由で、野菜嫌いな人はいませんか。
人工香料などを用いずに、食物自体が持つさまざまなにおいを抑えたり、際立たせたりできれば、好き嫌いのある人でもおいしく食べられる食品が生まれるかもしれません。そのため食物のおいしさを「におい」の面から評価する研究が、食品加工学の一分野として進められています。
においを「数値化」して評価
「におい」の感じ方は、人によってさまざまです。例えば同じ海産物のにおいでも、子どもの頃から魚や海藻をたくさん食べてきた人と、そうでない人とでは、感じ方が正反対になることが多いようです。
そこで現在、においを数値化して客観的に評価するため、異なる年齢層の人たちによる「官能評価」、食品からの揮発成分を分析する「ガスクロマトグラフィー」、複数種のにおいをあらかじめ「基準臭」として設定し、その量でにおいを評価する「におい識別装置」などが用いられています。
特定のにおいを抑えながらおいしくする加工法
生野菜は苦手だけど熱を加えて調理すれば大丈夫という人も多いでしょう。野菜や果物の青臭さは、熱を加えることで減らすことができますが、加熱しすぎると食品本来の味わいまで損なわれてしまいます。そのため、どれくらいの熱をどの程度加えるか、加熱する際に丸ごとか、薄くスライスするかなど、試行錯誤が必要になります。味噌、醤油など発酵食品は、発酵のプロセスを調整することでにおいを変えることができますが、これもあらゆる組み合わせを試さなければなりません。
こうした調整は簡単ではありませんが、嫌いなものでもおいしく食べられる加工法・調理法を開発することで「食」の多様性が広がり、農・水産業の新たな可能性も生まれるのです。
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先生情報 / 大学情報
南九州大学 健康栄養学部 食品開発科学科 准教授 矢野原 泰士 先生
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