おいしくて体にいい餃子って? ヒントは糖質消化性にあり
おかゆが「いつも」体にいいとは限らない?
「あまり食欲がないから今日はおかゆを食べよう」という日もあるでしょう。米は、生の「玄米」や「白米」、米を炊いた「米飯」、多めの水で柔らかく煮た「おかゆ」と、加工が進むにつれてでんぷんを保護する物質が取り除かれます。そして、食べた後に体内で分解されやすく、糖質として吸収されやすくなるのです。いわゆる消化がよい状態です。しかし、一方で糖質が急に消化吸収されると血糖値も跳ね上がり、糖尿病や肥満といった生活習慣病につながりかねません。
糖質消化性をコントロールする
米や麦などの糖質を含む穀物を体内で消化する機能を「糖質消化性」といいます。糖質消化性を確かめるひとつに「in vitro(イン・ビトロ)模擬消化試験」という、ヒトの消化器官をガラス器具の中で再現する方法があります。ヒトの個人差を考慮する必要がなく、消化中の食品そのものの機能性を確かめられるのが特徴です。食品の機能性を明らかにすることで、糖質消化性をコントロールする加工方法や調理方法がわかります。生活習慣病予防のための「血糖値の上昇が緩やかな食べ方指南」や、反対に、スポーツや体を動かす仕事で求められるような「短時間でエネルギーに変わる食品の提示」といった両方のニーズに応えられるのです。
ヘルシーなご当地グルメ「大麦餃子」
大麦は糖質の吸収を緩やかにする食物繊維を豊富に含む穀物です。大麦の産地として、全国でも有数な栃木県では、ご当地グルメの「宇都宮餃子」で、大麦を餃子の皮に使えないかと考えました。大麦にはグルテンがほとんど含まれないため、そのままでは弾力と粘り気のある生地にすることができません。しかし、地元餃子店の協力もあり、つなぎになるような素材を加えて試作を重ね、大麦を60%以上含む生地の開発に成功し、「大麦餃子」として商品化につなげることができました。今も、大麦餃子の食感の向上や、品種改良された大麦を使って麺類を開発するなど精力的なチャレンジが続いています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 農学部 農業環境工学科 准教授 田村 匡嗣 先生
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