マングローブから見える人間の営みとは

マングローブから見える人間の営みとは

マングローブを取り巻く問題とは

世界の熱帯や亜熱帯地域の水辺に茂る植物「マングローブ」ですが、実はサウジアラビアやパキスタンなどの乾燥地にも生息しています。乾燥地の水辺で緑の葉をつけるマングローブは、周囲の動植物や、その葉を食べる家畜で生計を立てる現地の人々に恵みをもたらしてきました。
しかし近年、観光地化による自然破壊や、エビの養殖などの他国の資本が流入し、マングローブ林の衰退が進みました。家畜を手放した人たちは都会へ出て、現金収入で暮らすしかなくなります。しかし、手に職がなければ日雇い労働などで生活せざるを得ず、貧困に陥ります。

伝統的な生活と環境の、両方を守る

このような状況で必要なのは、生活の選択肢を残すことです。スーダンでは、伝統的なラクダとマングローブの暮らしで、現金による収入が得られるシステムを確立しました。環境と調和し、現地の人たちの生活を維持しながら、マングローブも守るという課題は、社会学と生態学、技術学の3つをトータルで活用することで可能になります。

マングローブから見える海のシルクロード

乾燥地に生息するマングローブはたった2種類で、多くがグレーマングローブです。その地域性を調査するためアフリカからアラビア半島、インド洋沿岸に生息するマングローブのDNAの分析が進められています。通常、DNAは生息地が離れるほど類似性が薄れます。ところが最近、アフリカで採取したDNAとインドで採取したDNAとがよく似ていることがわかってきました。このようなことは自然には起こりません。そこで両地域の船や漁具、建築物を比較調査し、類似性が確認できれば「昔、両地域を行き交う航路があった」という仮説が成り立ちます。「海のシルクロード」の発見といえます。これは突拍子もない話ではなく、例えばアフリカ東部のマダガスカル島に住む人の先祖は東南アジアのマレー人で、主食はお米です。マングローブひとつから、時代や国を超えたさまざまな人間の営みが見えてくるのです。

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和歌山大学 システム工学部 システム工学科 環境デザインメジャー 教授 中島 敦司 先生

和歌山大学 システム工学部 システム工学科 環境デザインメジャー 教授 中島 敦司 先生

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システム工学、森林生態学

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大学とは、得た知識をどのように使うかを学ぶところです。私の研究室では、学生たちとフィールドワークに出ます。彼らには「コンピュータは答えを教えてくれない。僕たちがコンピュータに教えるのだ」と伝えています。答えは現地にあるのです。現地で疑問に感じたことやわからないことは、現地で調べ、考えてまた調べるのです。
自分の知識不足を感じたら、それを補うために授業を受けたり自分で勉強する、これが本来の学問の姿です。そして大学はそれが存分にできるところです。一緒に楽しく学問しましょう。

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