国際協力に求められるのは、自分とは違う立場の人への想像力
主役はあくまで現地の人!
国際協力と言ってまず連想されるのは、さまざまな国際NGO(非政府組織)や国際機関の活動かもしれません。各団体がどんなプロジェクトを行い、どのような成果を上げているのかが注目されることが多いです。もちろんそれも重要なのですが、主役となるべきなのはあくまでも現地の人です。彼らがどんな思いを持って暮らしているのか、本当に必要としているのは何なのか、ということに意識を向け、理解しようとすることが、国際協力において一番大切なのです。
マングローブに込められた思惑の違い
例えば2004年のスマトラ島沖地震のあと、被害の大きかったインドネシアのアチェ州では、今後の津波対策として沿岸部にマングローブを植林するプロジェクトが国際支援団体によって進められました。支援者側にとってその目的は、災害に強い社会を作ることにありました。しかし現地の人にとっては、津波対策という目的以上に、マングローブによってその水域の生態系を復活させることが重要でした。エビや魚にとってよりよい環境を作り、以前と同じように漁業によって収益を上げるという願いが込められていました。支援者側と現地の人の間には、そんな思惑の違いがあったのです。
自分とは違う立場の人への想像力が大切
この例では、支援者と現地の人との思惑の違いが深刻な問題を生み出すということを表しているのではありません。しかし、このような「ズレ」に気がついた場合、支援者はただ自分たちの目的を果たすことで満足するのではなく、その「ズレ」を、お互いをよりよく理解するためのきっかけとする必要があります。そうして現地で交流を深め、地域と地域が結びついていくことが、これからの国際協力において大事な点になっていくと考えられます。大切なのは、自分とは違う状況にある人の立場に立とうとする気持ち、相手が何をどう見ているのかをできる限り想像しようとする気持ちです。日常的にも大切なそのような意識こそが、国際協力において最も重要なものだと言えるのです。
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奈良県立大学 地域創造学部 地域創造学科 教授 亀山 恵理子 先生
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