がんとともに生きる人々に寄り添う看護のあり方とは
日本の国民病ともいえる「がん」
日本では、年間で38万人近くの人々が、がんで亡くなっています(2019年)。これは死因の中で最も多く、4人に1人はがんによって亡くなっている計算になり、まさに国民病と呼んでもいい病気です。私たちががんを「死」というイメージと結びつけて考えてしまいがちな風潮も、このような事情によるものです。
しかし、がんに対する昨今の医療技術の進歩には目覚ましいものがあります。かつては、患者さんにがんという病名を告げることさえはばかられる時代もありました。現在は、医師が適切なタイミングを図りながら、オープンな形で患者さんに病状を伝え、きちんと話し合いをしたうえで、どのような形で治療を進めるのかを決めていくのが主流となりつつあります。
情報を共有して、患者さんの意思を尊重する
がんという病気をむやみに恐れるのではなく、症状とその治療法を的確に見極めたうえで、患者さんがこれからどのような生活を望んでいるのかを尊重して、意思決定していくことが求められています。もちろん、医療が進化したからといって、がんという病気を完全に制圧することは容易ではありません。何度も再発を繰り返す人もいれば、症状の進行によっては、最終的に死を免れない人もでてきます。そこで重要になってくるのが、がん患者さんに対する看護の役割です。
死にゆく過程にあっても、人間は成長できる
人それぞれの境遇や症状によって違いはありますが、看護師が医師とともに適切な形で患者さんに寄り添い、話を聴いたり、時にアドバイスしたりすることによって、患者さんに残された人生の時間は、何倍も充実したものになり得ます。医師による治療が終了してからも、本当に最期の瞬間まで、看護師が患者さんにできることはたくさんあります。がんとともに生きようと努力する人々の姿は、医療や看護に携わる側にも、多くの気づきをもたらしてくれます。死にゆく過程にあっても、人間は成長することができるのです。
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東海大学 医学部 看護学科 教授 今泉 郷子 先生
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