日系工業団地の進出で、大きく変わる東南アジアの地域社会
東南アジアへの日系企業の進出
多くの日系企業が海外に進出しています。なかでも人件費の安い東南アジアは人気があります。インドネシアの首都ジャカルタ近郊にあるカラワン工業団地もその1つで、1990年代前半に日本の総合商社と地元の華人資本との協力によって開発され、入居企業の8割以上を日系企業が占めます。カラワン県は水田が広がる穀倉地帯として有名な所でした。工業団地に企業の入居が進むにつれ、国内の他地域から多くの労働者が流入し、彼らの購買意欲を支える商業施設の建設も相次いで、急速に都市化が進んでいます。
タイに世界最大級の日本人街
タイ南東部では、国際物流拠点となる港の完成をきっかけに巨大な工業団地がいくつも開発されてきました。自動車や機械などの日系企業も多数進出し、中長期で働く日本人が急増しています。彼らは工業団地に隣接するシラチャに集住するようになり、漁業が中心ののどかな港町は、世界最大級とも言われる日本人街として知られるようになりました。近年は日本人学校が開設されるなど、前出のカラワンとは異なる発展を続けています。
サプライチェーンのリスク回避が課題
東南アジア各地における社会変容には、製造業などにおける生産過程のグローバル化が大きく関与しています。日系企業は部品生産や組み立ての工程を、海外各国の拠点に分散して行うサプライチェーン(供給連鎖)を構築してきました。工場が雇用を創出したことで促された消費意欲の増大に、今度は消費関連の日系企業が進出していきました。
そうしたなか、2011年のタイの洪水災害は、現地の日系企業にもダメージを与えました。サプライチェーンが寸断され製品やサービスの供給が停滞し、その影響は日本国内にも広がりました。現下ではコロナ禍による工場の操業への影響も大きくなっています。一方、東南アジアは中国にとっても重要なマーケットです。米中対立で先行きが不透明な中、その動向を注視しながら、日本はサプライチェーン戦略立て直しの必要性に迫られています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東海大学 文化社会学部 アジア学科 教授 内藤 耕 先生
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