講義No.13283 看護学

新しいセンサで高齢者の転倒防止と看護師の負担軽減を

新しいセンサで高齢者の転倒防止と看護師の負担軽減を

高齢者の転倒リスクと見守り

病院に入院している患者のベッドの多くは、見守り機能がついています。ベッドから起き上がったり、立ち上がったりするとセンサが反応して、看護師に音で通知されるシステムです。特に高齢者は、ベッドからの転倒・転落により骨折してしまうと、入院期間の長期化や、ADL(日常生活動作)の低下につながります。しかし、見守りのために病室にカメラを設置するのはプライバシー保護の観点から望ましくありません。そのため、こうしたセンサによる見守りシステムは、転倒転落の危険性を早期に発見するために重要な役割を担っています。

看護師の業務負担軽減も課題

一方で、病院の看護師は業務内容が多岐にわたり、とても多忙です。医師の診療の補助、入院患者の日常生活の援助やコミュニケーション、看護記録への記載など、多くの業務を抱えています。現在使われている見守りシステムの通知は、通常のナースコールと同じ音のため発信源の区別がつかず、なおかつ患者のどんな動作によって呼び出されたかがわかりません。そのため看護師は通知の度に病室に確認に行かなくてはならず、頻繁に業務の手を止められてしまいます。看護師が本来必要のないときに病室に行くことによる時間のロスで、できるはずだった患者のケアができていない可能性があるということです。超高齢社会に対応するためにも、この課題を解決する必要があります。

テクノロジーで見守りと業務負担軽減を

現在、「一次元輝度分布センサ」という新しい技術を活用した高齢者の転倒転落防止センサの開発が進められています。このセンサでは、「ベッドに寝ているとき」「ベッドに座ったとき」「ベッドから立ち上がったとき」「部屋に誰かが入ってきたとき」などの状態を的確に感知できます。これにより、患者の転倒転落の危険性を早期に発見しつつ、看護師の業務負担が減らせるのではないかと期待されています。看護の現場でも、新しいテクノロジーを取り入れることでさまざまな課題を解決できる可能性はあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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宇部フロンティア大学 看護学部 看護学科 講師 江口 恵里 先生

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メッセージ

高校時代は、いろいろなことを吸収できる時期です。さまざまな人とコミュニケーションをとり、経験をして、自分と異なる価値観に積極的に触れてみましょう。自分が進みたい道が見えてきたり、何かをやってみようと思ったときに新しいアイデアが浮かんできたりと、あなたの役に立つ日がきっと来ると思います。なお、看護の世界では、超高齢社会における課題がたくさんあります。新しいテクノロジーの活用も必要です。ぜひあなたの柔軟な思考で、どんな課題や解決方法があるか考えてみてください。

宇部フロンティア大学に関心を持ったあなたは

宇部フロンティア大学は明治36年創立の伝統を誇る学校法人香川学園が母体で現在、幼稚園、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院、大学院附属臨床心理相談センター、大学附属文京クリニックおよび宇部環境技術センターからなり、山口県の教育・研究の一大拠点として地域への人材供給を含む地域貢献に取り組んでいます。大学では、学園の創始者(香川昌子)の教育精神である「人間性の涵養と実学重視」を建学の精神とし、「あなたらしさを仕事力に」というキャッチコピーを掲げて、一人ひとりの個性を重視した教育を行っています。