「食う・食われる」の関係でつながる昆虫の生態と生物多様性

「食う・食われる」の関係でつながる昆虫の生態と生物多様性

水稲害虫の有力天敵のクモ

自然生態系の中で生物は「食う・食われる」の関係でつながっています。害虫から作物を守ることが重要な農業分野では、この関係をうまく利用することが大切です。
水田で稲につくウンカ・ヨコバイ類などの害虫を食べてくれるのが、クモです。したがって、水田には常に高い密度でクモがいることが理想的ですが、害虫も年に2~3回、1カ月ほどほとんどいなくなる時期があります。この間にクモが餌を求めてよそへ移動してしまうと、害虫が発生したときに対抗できません。

クモを水田につなぎとめる「つなぎの餌理論」

水田内には、稲の害虫ではなくても、クモの餌になり得る生物が生息しています。腐植土から湧いてくるハエなどです。主要害虫の発生の合間にも、ハエが「つなぎの餌」としてクモに捕食されると、水田のクモの個体数を維持でき、害虫発生時に即対応できるようになります。そこで、水田に有機肥料を使用して栄養価の高い腐植土ができるようにすれば、発生するハエの個体数も増え、クモの個体数を維持できるはずです。これを「つなぎの餌理論」と呼んでいます。

オオルリシジミの保護と生物多様性の保全

環境保護の例では、阿蘇には、オオルリシジミという絶滅危惧種の蝶(チョウ)がいます。オオルリシジミが食べるのはクララという食草ですが、草原にイネ科の雑草が生い茂ると、クララは育ちにくくなります。そこで、昆虫分布と草原環境の関係を研究してみると、野焼きや放牧をしている地区では、していない地区に比べてオオルリシジミの個体数が多いことがわかってきました。野焼きをすれば食草の生長はよくなり、放牧をすれば牛は苦いクララを食べずに牧草を食べるため、クララの成長を守ることになります。つまり、野焼きや適切な放牧をした方が草原のクララは生き残りやすく、オオルリシジミの生育環境の保護につながるのです。
昆虫も植物も動物も、それぞれに個性を持ち、つながり合って生きている生物多様性の実態が見えてきます。

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東海大学 農学部 農学科 教授 村田 浩平 先生

東海大学 農学部 農学科 教授 村田 浩平 先生

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昆虫学、応用植物科学

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大学で何を学ぶにしても、基礎学力はあった方がいいです。仮に苦手であったとしても、英語も数学も勉強しておきましょう。苦手なことでも逃げずに真正面から受け止め、今与えられたことを自分なりに一生懸命にやるという経験が、自分を強くします。
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