沿岸域の異変、「黒潮大蛇行」はなぜ起こる?
物理の視点で海を研究する海洋物理学
「海洋物理学」とは、海で見られる自然現象や変化、またそれらが起こる要因を調べる学問です。一言で海洋と言ってもさまざまな研究分野がありますが、その一つに「沿岸の研究」があります。沿岸域では、陸から供給される河川水と、沖合から流入してくる海水が混じり合います。海の塩分はどこも同じと思われがちですが、河川水が流入する沿岸域は塩分が低く、川の水が増える夏は、さらに塩分が下がります。また、陸からの河川水は多くの栄養分を含むため、沿岸域では生物の活動が活発になります。
沿岸に大きな影響を与える「黒潮」
沿岸を知るには、海の変化を地球規模で調べる必要があります。水温と塩分の変化、「黒潮」の流れなどが重要なポイントです。黒潮とは、北太平洋の海上に吹く風が起こす海の流れのことで、フィリピンのルソン島あたりから流れが強まり、台湾東岸、東シナ海、そして日本の太平洋沿岸を流れています。この黒潮が沿岸を離れ、沖合に大きく蛇行することがあり、これを「黒潮大蛇行」と呼んでいます。なぜこのように黒潮が蛇行するのかは、まだ解明されていません。この大蛇行が発生すると、遠州灘沖の水温が低下することがわかっており、低温を好まない魚は、ほかの場所に移動してしまいます。
黒潮大蛇行の発生
この黒潮大蛇行が、2017年から発生しました。2020年にかけて駿河湾のサクラエビが不漁となりました。ほかにもシラスの不漁や紀伊半島沖でのサンゴの大量死なども起きており、過去の海洋データと漁の状況との照合から、この大蛇行が関係しているのではないかと考えられています。
大変興味深い研究対象として沿岸域の調査はもちろんのこと、地球全体の海流について、観測やシミュレーションなどの調査が進められています。沿岸は波も弱く、それほど大きな変化はないように思われがちですが、実際にはさまざまな現象が起こり、変化に富んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 海洋学部 海洋理工学科 海洋理工学専攻 准教授 高橋 大介 先生
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