環境政策は誰がどう決めているのか?
環境問題を発生させる社会の仕組み
気候変動や生き物の減少、廃棄物の処理、水や大気の汚染など、私たちは様々な環境問題に直面しています。自然環境の劣化は、私たちの日常生活の快適さを損なったり、場合によっては健康や生命を脅かしたりする場合もあります。では、こうした環境問題はなぜ生じてしまうのでしょうか? 例えば自然環境の価値が正当に評価されずに過剰に利用されてしまったり、政府が適切な対策を打ち出せなかったりという社会の仕組みが原因であることが指摘されています。環境政策学では、環境問題を発生させてしまう社会の仕組みに注目し、その改善策を考えます。
社会の仕組みを変えるという難題
社会の仕組みを変えることは、とても複雑で難しい問題です。例えば、環境に悪影響を与える開発事業を禁止する仕組みを新たに導入しようとします。自然環境が保全されることで利益を得る人は新しい仕組みの導入に賛成するでしょうが、開発事業を行うことによって利益を得る人はそのような仕組みの導入に反対するでしょう。そうした異なる利害を持つ人々の存在を考えると、環境保全に向けて社会の仕組みを変えていくことはとても難しい問題です。
誰がどうやって決めれば良いのか
複雑に利害が絡み合う中で、環境保全の方策をどのように決めていけば良いのでしょうか。環境政策学の中でも政策過程研究という領域では、こうした問いに応えるべく、過去の重要な決定はどのようになされたのかを調べています。例えば、戦後すぐに発電用に建設されたダムが撤去されたという事例があります。この事例では、ダムの存在による浸水や振動、悪臭といった被害を感じていた周辺住民の方々による撤去を求める運動をきっかけとしつつも、様々な社会・経済・政治環境の変化が撤去の実現に影響を与えていたことがわかってきました。誰がどうやって決めるべきなのかという問いに直接答えを見つけることは難しいですが、過去の複雑な決定過程を解きほぐして理解することで、持続可能な社会への転換に向けたヒントが得られるでしょう。
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金沢大学 人間社会学域 地域創造学類 教授 大野 智彦 先生
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