AIによる高度な画像認識を普及させるための課題は省エネ?
画像認識には大量の演算が必要
人工知能(AI)を用いた画像認識が高度になるにつれ、省エネの重要性が増しています。高精度な画像を認識するためには大量の演算が必要で、エネルギーを多く消費してしまいます。もしバッテリーで動く小型端末や車などに実装しようとした場合、エネルギー消費量を抑えなければなりません。
AIによる画像認識では、人間の脳にあるニューロンという神経細胞をコンピュータ上で再現したニューラルネットワークが主流です。精度が落ちない範囲でニューロンを減らす「プルーニング」や、演算に用いる計算を簡単なものにする「量子化」など、さまざまな方法で省エネが試みられています。
小学生もわかる計算に
中学生レベルの計算を小学1年生レベルに置き換えるなど、演算は簡単にすればするほどエネルギーを節約できます。例えばAIにとって負担の大きい掛け算を、「特定の数より大きいか小さいか」といった比較演算で表現できれば、省エネが可能です。ニューラルネットワークはいくつもの層が連結した構造になっており、各層で大量の掛け算や足し算などを行っています。具体的にどのように比較演算に置き換えが可能か、研究が進められています。
回路の工夫でエネルギーを節約
回路を改良して計算速度などを上げるハードウェアアクセラレーションも、省エネには重要です。例えばニューラルネットワークはAIチップなど専用の回路を使えば処理が速くなり、省エネにつながります。
一般的なコンピュータに搭載されている大きなプロセッサは、高度な計算が可能です。しかし複数の計算を並行して処理することは苦手なため、ひとつひとつ順を追って演算しています。一方AIチップには小型プロセッサが大量に並べられており、簡素化した計算なら並列に処理可能です。プロセッサを小さくすると簡単な計算しか行えませんが、必要なエネルギー量は少なくなります。また、いくつもの計算を同時に行えるため、結果的に処理速度が速くなるのです。
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会津大学 コンピュータ理工学部 コンピュータ理工学科 上級准教授 富岡 洋一 先生
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