セキュリティがあってこそのネット社会
携帯セキュリティは「お金を払ってる?」が原点
1990年ごろに自動車電話が開発され、それから携帯電話が世に出てきました。これら無線電話の創成期に、まず問題になったのは、電話会社からみて「この通話を求めている利用者は、本当にお金を払ってくれている正規の利用者なのか?」ということでした。それでどうしたかというと、電波の基地局にアクセスしてきた携帯電話の識別番号(ID)を問い合わせ、お金を支払っていたら通話サービスを提供することとしました。
IDが盗まれる事件が続発。ワンタイム方式が登場
IDの利用だけでは他人のIDを盗んでタダで電話をかける事件が大量に発生します。そのIDにはパスワードも含まれ、本人確認が行われます。「開けゴマ」の合言葉を用いる、いわば「アリババ方式」です。しかし、パスワードが毎回同じものだと、一度盗まれてしまえば、結果は同じです。そこで今度は、確認内容を毎回違うものにする「ワンタイム(一度限りの)方式」が考え出されました。この方式は、呼びかけに対する応答をその都度変えます。一度限りの応答を盗まれても、次回に流用はできません。日本やヨーロッパでは、そんな携帯電話から普及しました。
セキュリティのおかげでネットを安全に使える
現在では、例えばネット書店で本を買うとき、先ほどの携帯電話とは違い、たいていあらかじめ自分で決めた固定のパスワードを使います。このため自分のIDとパスワードを盗まれないように、いわば分厚い「土管」の中を通して、他人からは決してのぞけないように通信し、安全を確保します。この土管を通信のたびに作る作業があるので、このセキュリティの仕組みを使うと、少し動作が遅くなります。
インターネットはいつでも、ほかからのぞける仕組みになっていますが、IDとパスワードを守るセキュリティ技術が生み出されたことで、ネットバンキングやネットショッピングなどを安心して使えるようになったのです。
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先生情報 / 大学情報
神奈川大学 情報学部 システム数理学科 教授 森田 光 先生
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情報セキュリティ学先生への質問
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